「おめでとうアリオス」
幾度か聞いた言葉
「アリオス誕生日おめでとう」
出逢う奴等に次々と掛けられた言葉
目の前ではとける様な笑みを浮かべたアンジェリークの姿
「サンキュ」
幾度か繰り返した言葉を返して、アリオスはアンジェリークの招きを受けた

さほど大きくない部屋の中
豪華とは言い難い料理の数々
まるで幼い子供に対する様な手作りの飾り
“誕生日おめでとう”
の文字とどういう訳か顔を揃えた奴等の顔
「お前等………」
確か約束をしたのはアンジェで、確か彼奴は2人だけで、と言っていたはず
「直ぐに退散するからさ、私達にもお祝いさせなよ」
言葉と同時に伸ばされた腕が、両腕を掴まえる
それから背後を塞ぐように立つ気配
逃げられないように固定された俺に向かって掛けられる言葉の数々
言い回しも、言葉の中身もみんな違っているが必ずついてくる“おめでとう”の言葉
仕方ねぇな
「解ったからいい加減離しやがれっ」
流れてくる感情が面映ゆく、がっちりと捕まれた腕から逃げ出すのとほぼ同時に
ガキ達の歓声と共に、騒ぎの中心に引きずり込まれた

狭い室内には、友人と呼ぶのには抵抗の有る奴等の姿
「お前等、よっぽど暇なんだな」
ため息混じりの言葉に、抗議の声が上がったが、今の状況はそう言われても仕方の無い事だと思うぜ
―――欠席者0
本人達曰く、俺の友人―――仲間―――達は誰1人として欠ける事無く集まっている
からかいの口調に、笑いながら上がる抗議の声
祝いの言葉を述べるだけなら、顔を合わせた時に済ませばそれで事足りる筈
本気で暇だ、とは思っては居ない
それをわざわざ、こんな所まで足を運んで居るんだ
俺の言葉を本気だと思っている奴等も居ない
昔なら、暇だからだと思いこみたがったこいつ等の態度
だが、心を占めるのは照れ臭く暖かな感情
―――こういうのも悪くない

散々大騒ぎして、ようやく奴等が帰って行く
残ったのは、プレゼントの山とアンジェリーク
「ようやく静かになったぜ」
疲労感と共にため息を吐けば、アンジェリークが穏やかに笑う
「でも楽しそうだったよ」
一言告げて、フワリと翻った茶色の髪
楽しげな笑い声が聞こえる

今日一日何度も何度も告げられた“おめでとう”の言葉
否定の言葉は浮かばない
遠く沈み欠けた太陽が見える
短いとは言い難い時間を費やされた出来事
苦痛を感じる事無く
感じたのはむしろ心地よさ
―――確かに今日は、目出度い一日だ

今日1日自分が、楽しそうに穏やかな笑みを浮かべていた事をアリオスは知らない

 

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