一番最初におめでとうと告げたかった
今日はアリオスの誕生日だから
勿論初めからお祝いをするつもりで今日の約束はしていたけれど
でもきっと、私と会う前に誰かがおめでとうの言葉を告げてしまう
そんなの当然だし、当たり前の事
私の思いはただのわがまま
だけどどうしても告げたかった
貴方が生まれたこの日、一番最初に「おめでとう」と

「おめでとうアリオス」
その言葉にアリオスは、言葉に詰まって不思議そうな顔をした
「アリオス誕生日おめでとう」
続けた言葉に、視線を巡らせてそして片手で額を抑えて見せる
「お前、な………」
いかにも呆れた、力が抜けたって言う仕草だけれど
手の中のプレゼントの箱を差し出して小首を傾げる
「アリオス?」
小さな呼びかけの声にアリオスの手は前髪を掻き上げる
「………とにかく中に入れ」
背を向けようとするアリオスに私は両手を伸ばしてプレゼントを差し出す
「受け取って」
きっと私の顔には満面の笑み
アリオスの視線がプレゼントへと向けられる
僅かな躊躇いの後伸ばされる手
「………サンキュ」
そして穏やかな笑みを浮かべた

11月22日 深夜
暖かな光と温もり、静かな夜
本番はまだ先、まだ12時間以上先の筈だけど………
小さなテーブルの上には、湯気を立てるカップが2つ
時折交わされる些細な会話
穏やかに流れていく時間
まだ解かれない包装
アリオスの手の中に有るたった一つの贈り物
特別な日、特別な時間、特別な言葉、特別な………
“お祝い”に相応しいモノなんて何一つ無い
それはお祝いの本番の席では無いからだけど………
直ぐ傍に在る穏やかな気配
2人だけの空間
おめでとうとありがとうの言葉と、気持ち
―――ああ、幸せね
ごちそうも貴方の好きなお酒も何も無いけれど
静かで穏やかで、こんなにも心地よくて
2人が共に居ることが当たり前だって、そう思わせてくれる
だから、ね
約束の時間はまだまだ先だけれど、勿論約束の時間にもお祝いはするけれど
今が本番だって、そう言うことにしても良いよね?

 

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