―――アリオスが気に入ってくれて、そしてずっと使ってくれるように

小さな願いと共に渡された掌に載る程の小さな箱
緊張の余り握りしめでもしたのか、少し歪んでいる
不器用に結ばれたリボンが、誰の手で結ばれた物なのか強く主張している
楽しくて、嬉しくて
自然に笑みが浮かぶ
そう短くはない年月、過去様々に贈られた贈り物
長い間俺にとって、贈り物は取り入るために捧げられるもの機嫌を取るためにわたされる物だった
贈り物っていう言葉には嫌な思い出が多かった
だが―――
アリオスは手の中の小箱に視線を落とす
ほんの少し歪んだ形が一生懸命さを伝えてくるようで、見つめる眼差しが柔らかくなる
こんな贈り物なら………
頭を過ぎった言葉に心の奥で苦笑する
「開けても良いか?」
言葉と同時に手が動く
音を立てて包装が解かれる
息を殺して手元を見つめる視線
現れる朱い小箱
滑らかな手触りの箱の中身はきっとアクセサリー
じっとこちらを見つめる視線の持ち主に見せつける様にゆっくりと、アリオスは箱を開いた

時折聞こえる楽しげな笑い声
静かに会話を交わしながら、穏やかに時間が過ぎる
ふと、何気なく移した視線の先
夜の暗闇と明るい室内を隔てる窓硝子に映る光景
寄り添うように座る自分達の姿
柔らかな笑みを浮かべるアンジェリーク
予想もしなかった自分の表情
―――幸福な光景
そんな言葉が思い浮かんだ

仄かな明かりが室内を照らす
窓硝子に映し出された自分の姿
何処か緩んだ表情に無意識の内に手が動く
髪の間から零れ見える真新しい装身具
両耳で自己主張する深い緑
自分が持つ色彩よりも一段と深い色
なぁ、この色を選んだのは何故だ?
問いかけられなかった言葉がもう一度浮かぶ
選んだ理由が、思う通りなら良い
深い緑、アンジェリークの瞳の色

―――きっとこんなプレゼントなら、喜んで幾らでも受け取るだろう

 

 

 
 
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