「誕生日おめでとう」
「ああ、サンキュウ」
擦れ違いざまにかけられる言葉に、手を上げて返事をする
はるか以前、なんの意味も無かったこの日
苦痛だった行事
時折遠く昔を思い出す事はあるが、決して短いとは言えない歳月の間に、記憶が塗り変わっていく
心地よい空気
楽しい記憶
年を取ること自体は、歓迎したいことではない
だが、守護聖の類は通常の時間の流れから切り離された存在だ
本当に年を取っているのか、時が経過する程にはいたってはいないのか
最早判別のつかない身体
聖地の時間の進み方もバラバラな以上、今度の誕生日で幾つになったのか明白にする理由も無い
そう考えれば、祝う必要も無い
初めの頃は、当然の様にそう思い
人々の言葉に、困惑と
―――少しばかりの嫌悪を抱いていた
それも昔の話
今は
それも、いいんじゃないか?
誰かが言ったような、浮き立つような気持ちになるわけでも無い
わくわくする気持ちを抱くわけでも無い
けれど
あの“言葉”を言われるたびに沸き上がっていた暗い感情
パーティと言われただけで沸き上がる殺意
それは、何処かに身を潜めた
楽しみだ、とはまだ言えない
だが、言うならば………

賑やかに人が集まっている
主役の登場に、人々の視線がこちらへと向き
歓声が上がる
彼等の間を通るアリオスへ
触れる手とそれぞれの言葉
道の先には笑顔を浮かべて待つ姿がある
「悪く無いな」
口の中で言葉がこぼれ落ち、自然に笑みがこぼれた
 

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