回廊を曲がろうとする姿を追う
足早に歩く背中に追いつくのは少し大変で、少し小走りになる
「もうっ」
私が後を追っているなんて事は絶対に気が付いてる
ほら、また少し歩くスピードが上がっている
態とだわ
私から、ここから逃げる様に去っていく姿
そろそろ諦めてくれると嬉しいんだけど
人気の無い場所で彼が歩く速さがゆっくりに変わる
「なんのようだ?」
測ったかの様なタイミングで振り返る
きっと測っていたんでしょうけれどね
「わかっているでしょ?」
今日この日、私がアナタを追いかける理由
そしていつもなら出会うはずの人達と会わない理由
「招待状は送った筈よ?」
小さなパーティの招待状
「我は………」
続けようとした断りの言葉は聞かずに私はその腕を強引に取る
「さ、みんな待ってるわよ」
そう言って無理矢理引っ張った身体は僅かな抵抗の後、私がするままついてきた

賑やかに
けれど静かに時間が過ぎて、帰宅の途につく
目立つのに、目立たない様に会場を後にする姿を私は追う
扉を出たすぐの所で待っている人影
彼の側へと歩み寄って
私は細長い包みを渡す
彼はまだ“めでたい”とは思ってはいないから
“おめでとう”の言葉はまだ言えない
「なんだ、これは?」
顔に浮かぶ感情は困惑
浮かぶ感情が不快で無くなっただけ随分マシになったわ
「プレゼントよ」
「………もらう理由が無い」
一瞬生じた躊躇い
理由がある事は知っていて、けれど受け入れられない
「感謝の気持ちだから受け取りなさい」
「感謝?」
「ええ、ここに居てくれる事に対しての感謝の気持ち」
今ここに存在していること
この場所に留まっていてくれること
そのどちらも私達にとってはとても嬉しいことなのよ?
それは紛れもない本心で
同時に彼がコレを受け取る為の言い訳でもある
「それは、受け取らねばなるまいな」
僅かな躊躇いの後、私の手の上から包みが消える
「ありがたく頂くとしよう」
少し硬い彼の言葉に私は笑みを浮かべる
「みんなの気持ちが入っているんだから、ちゃんと味わってね」
手の中の地味に視線を移すと一つ頷いて歩き去った

瓶の中身をグラスに注ぐ
芳醇な香と微かな甘み
アルコールが口の中に広がり、喉を落ちる
質の良い酒
「女王の贈り物ならば当然か」
この世界に満ちた穏やかで優しい気配
身近に感じるようになった気配を受け止めながらレヴィアスはグラスを煽った

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送