実力
 

ふと、賑やかな声に足を引かれる
足を運んだ先には、幾つもの人影
格好はばらばらだが、整然とした動きと、何よりも先頭に立つヴィクトールの姿が、ココにいるのは“軍人”だということを教えている
ヴィクトールの後ろに着いている奴等の動きがぎこちないのは“新人”だからだろう
………楽しそうだな
自ら新人の指導を行っているらしいヴィクトールは、あからさまに楽しそうだ
何がそんなに楽しいんだか………
口元に笑みを浮かべながら、アリオスは賑やかな集団に背を向けた

鋼を打ち合う音
土を蹴る音
時折小さな悲鳴が上がる
数秒の静寂
「………実力不足だな」
特に感情の込められていない声が告げる
「まぁ、それは致し方ないでしょう」
部下の手から零れ落ちた剣をヴィクトールが拾い上げる
「見込みのあるヤツを拾ってきたって聞いていたけどな」
アリオスがからかう口調で告げる
「その筈だが………この状況も仕方がないだろう」
ヴィクトールが真面目な口調で告げる
「それだけ平和だ、って?」
目の前の兵士達が再び決められたメニューを行う
「それで、使える様になるのか?」
アリオスが見る限り、今すぐに使えるような人材は居ない
「まぁ、多少の時間は掛かるだろうが、それは何処でも同じだ」
「同じ、ね」
ここに居る連中を一人前にするのは時間が掛かるコトは分かり切っている
アリオスにしてみれば、他人の指導なんてモノは面倒なだけだ
「ま、精々がんばれよ」
「期待に添える様に努力しますよ」
晴れやかに笑いながらヴィクトールが答えた

街中で、“王立派遣軍”の制服に身を包んだ人物とすれ違う
一瞬彼からアリオスへと視線が向けられる
目が驚きに見開かれる
何かを言いかけた口が奇妙な形に歪んで、閉じられる
アリオスが通り過ぎた背後で、動揺した足取りが遠ざかっていく
それなりにさまになっているじゃないか
そろそろ顔を出しても良いかもしれねーな

“王立派遣軍”の建物へ足を踏み入れると同時に
相変わらず賑やかな声が聞こえる
新しい新米兵士と少しだけ成長した元新米
「まだまだって所だな」
ヴィクトールの問いかけに、アリオスがため息混じりに答えた

END
 
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