趣 味
 


 
平穏で穏やかな日々
歓迎するべき状況に、馴染むことのできない自分がいる

何の事件も無い穏やかな日々
急がなければならない仕事も無い
羽を伸ばして
息抜きをして
のんびりとした穏やかな時間を過ごす
“至福の時”
そう評する者も少なくは無い時間
だが、それも―――

寝転んだ姿勢のまま、掌を空に翳す
まぶしいほどに降り注いでいた光がさえぎられ
翳した手が、微かに太陽に透けて見える
………気がする
「暇だな」
翳した手が力なく落ちる
優しく吹く風がそっと髪を揺らす
何も無い時間
何も無い日
ぽっかりと空いた時間
今日に限って、何もすることが無い
時間が空いたからといって、没頭する趣味も
嬉々として手を出す書物の類も
何一つ存在していない
いっそのこと、抜け出してしまおうか?
この場所まで、届くような事件は無くとも
この地をでれば、やるべきことの一つや二つは見つかるはずだ
だが………
それもまた面倒だ
ぼんやりと空を見つめる
目に映るのは抜けるような青空
「どうする、かな」
やるべきこと
やりたいこと
今は、何一つ思いつかない
こんな時間、今までは何をしていた?
考えたところで思いつかない
理由は―――
本当は考えるまでも無く分かっていること
………まぁ、いいか
今は―――
心地よい暖かさに瞼を閉じる
きっと、そのうち
やがて、微かな寝息が聞こえた

かつて、空いた時間に行っていたはずの諸々の事は、この地にはひどく不釣合いで
趣味と呼べるほどの趣味は無い
平和な世の中
平穏な時間を持て余して
そして誤解された趣味が浸透していく
 
 
 
 
 

END
 
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