アンケート
発展をとげる平穏な世界
世界は平和で、大規模な争い事など起きてはいない
そうは言っても、いつ何が起きるかは誰も解らない
大きな出来事では無くとも、小さなトラブルに巻き込まれる可能性はある
「もう少し詳しい事を知っていた方が良くないか?」
誰かが言った言葉に幾人かが賛同の声を上げる
「だが、どうする?」
盛り上がり始めた彼等へと恐る恐る投げられた問いかけ
「まさか、実践してもらう訳には行かないよな」
幾つかの意見が出され
「それじゃあ、これで問題ないな?」
日が変わる頃ようやく意見がまとまった
ある日王立派遣軍から一枚のアンケートが届けられた
各守護聖に届いたアンケート項目は同一で
質問事項は僅か2問
戦いの際の武器は何を使いますか?
得意とする戦闘スタイルはどんなものですか?
戦いを常とはしない大部分の守護聖は設問事項に首をひねりながら
彼等は彼等なりの回答を記述した
「もし何かが在ったときの為に、得意とする武器はどんなものなのか、知りたかった様ですね」
いつものお茶会の席
不可解なアンケートの内容を尋ねられヴィクトールが困ったように回答する
「何か在った時?」
「ああ、何らかの原因で戦う事が必要となったとき、戦えないというのならそれはそれで良いんだが、俺達も戦うとなれば、どんな武器を使い、どんな戦い方をするのか、それを知らずにいると連携を取るのが難しいからな、事前調査って訳だ」
ヴィクトールの言葉に、肩を竦めたり、互いに顔を見合わせたり、各自が思い思いの態度を取る
互いに、いざとなれば戦う事が出来る事は知っている
それぞれが、どういった種類の武器を得意とし
どんな戦い方をするのかも、大まかな所は知っている
「そりゃ、いざとなったら戦いますけど、いざって時に武器を持ってるとは限らないんやないですか?」
「確かにその通りだね、それとも何処かに出かける際には何らかの武器を持ちあるけって事なのかな?」
チャーリー、セイランの言葉に彼等が扱う武器が思い浮かぶ
彼等二人だけではなく、ティムカも日頃から持ち歩くには適さない、が
「いや、そこまで期待はしていないだろう」
守るべき相手に戦ってもらおう等と考える筈は無い
………そう思いたいだけかもしれんが、それは無いと信じたいな
「あくまでも参考程度という事ですね」
「僕の場合は普段の様子で、携帯しているかどうかすぐ解りますね」
ティムカの言葉が合図という訳ではないだろうが、視線が互いへと向けられる
「………常日頃から戦う手段を有しているのは、ヴィクトールとアリオス、メルくらいですね」
「えっ?メルも?」
エルンストの言葉に、メルが酷く驚いた顔をする
「そう言われて見ると、メルちゃんもいつでも大丈夫やな」
「別に武器自体が必要ないからね」
「………あ、そっか」
魔導の力をふるうのに、特に道具は必要ではない
「なんかおかしな事が起きた際には、メルちゃんを頼る事にするわ」
冗談めかしたチャーリーの言葉に幾つか同意する声が重なった
届けられたアンケート用紙に目を通す
途惑いながらも書き込まれた回答の数々
幾つかの回答を覗き込んで、互いの視線が交わる
「………まぁ、もしものときの保険だしな」
「そう、だな」
アンケート用紙に書き込まれた回答の一部内容に、彼等はこっそりと首をひねった
END
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