「ねぇ」
「なぁ」
「大変だよっ」
「大変なんだぞ」
突入してきたチビッ子達―――まぁ、一人は外側だけは大きいけどな―――が騒ぎ立てる。
「なんだってんだ、今度は」
呟いた言葉は、賑やかな声に自然にかき消される
２人で口々になんかを訴えているんだが
「………何言ってるかさっぱりわからねぇぞ」
好き勝手に話をする二人分の声を拾う能力なんてのは俺には無ぇ
少し苛立った俺の声に、二人の言葉が漸く止む
「通常、人は複数の声と言葉を同時に聞き分けるのは難しいですから」
声と同時に、目の前に飲み物が現れる
声をかけたのは当然俺の相棒兼教育係
「ありがとうございます」
チビ達は勝手に目の前に出現したグラスに躊躇いも無く手を伸ばす
ま、ここではそんな事も日常だ
“精霊”のやる事にいちいち驚いていたら身が持たない
「………んで、何が起きたって？」
さっきの騒ぎが嘘の様にのんびり茶を啜っている二人に、仕方なく水を向ける
一瞬の沈黙、それからまた同時に好き勝手に口を開く
無意識の内にため息が零れる
ちらりと見た視線の先
何事も無かった様ないつも通りの姿
………なら、問題はねぇか
騒ぎ立てるチビ達の話は、たいしたことの無い話
失敗したかもしれねぇなぁ
賑やかな室内に、何度目かのため息が零れた

いつもの日常
いつも通りの日々
どこかへ向かう間に誰かと会って
なんとなく立ち話
そのまま別れる事もあれば、別れる前に新たな人が加わって、話が続く事もある
そしてたまには、話の行き違いが起きたりして
誰かに意見を求めたり
時には、騒ぎが起きたりして
誰かに助けを求めたり
それもいつもと変わらない日常