手にしたモノ
 


 
私は様々な物を抱えている
両手に一杯、持ちきれない程、沢山
“私”は何も持っていない
持っていた筈の物は全て無くなって
“私”の両手は空っぽのまま
沢山のものを抱えた私と
何も持たない私
どちらも私
抱えきれない程様々な物を抱え込んで
でも、それは“私”のものじゃない
“私”の手の中は空っぽで
“私”は“私”の手の中に、何も持つことを許されていなかった
悲しかった
無くしただけでは無く、得ることも出来ないと知って、寂しかった
でも―――

「ずっと傍に居て」
じっと目を見つめて言葉にする。
願っていた言葉
望んでいた言葉
諦めようとした、言葉
「ずっと一緒に居て」
私のたった一つの望み
………随分贅沢な望みだけれど
返ってきたのはとても長い沈黙
あまりにも長いその時間に心が音を立てるけれど
黙ったまま、ずっと目を見つめる
視線が少しそらされる
心に滲んでくるのは不安
気が遠くなるほどの時間が過ぎて
ゆっくりと動く唇

「別にネ、同じにする必要は無いと思うンダ」
そう言ったのはたった一人の親友
「別にいいんじゃないかな?」
そう言ったのは今の私の半身
そして、目の前に出された答え
だから、諦めるのは止めにしたの

そして、“私”では無い私の手に抱えられた全てがこの手を離れたとしても
“私”の手に残るものがある
―――一生離さないからね
あの時つぶやた言葉
”私”が手にしたたった一つ
かけがえのない大切な存在
 

END
 
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