力の差
 


 
目の前に居る存在
うるさい程の心音
痛い程の緊張
ダメだ………
不意に浮かんだ言葉
言葉と同時に力が抜ける
そして、ざわめきが耳に聞こえた

稽古じゃなく
試合―――手合わせをしてみたい
実力に大きな開きがある
そんなことは解ってる
解っているけどさ、それでも一度くらいは試してみたっていいだろ?
「一度手合わせがしたい」
初めて告げた時は、言った言葉も無視された
「頼めないかな?」
二度目に頼んだ時は、周りの人達に止められた
「………どうしてもっ」
三回目
三度目の正直
世の中にはそんな言葉があるらしい
呆れたような視線と長いため息
突き刺さる視線に少しだけ後悔する位の時間が過ぎて
投げやりに告げられた承諾
気が変わらないうちに
慌てて剣を握って
場所を移動して
「………全然敵わなかったなぁ」
地面に座り込んで、空を見上げる
「かなうも何も、何もしてねぇじゃねぇか」
ため息と共に吐き出した言葉に聞こえた返事
「やっぱりそう見えたんだ」
何もしなかった訳じゃない
「ちがったのかよ?」
「全然違う」
確かに、何もしていない
剣を構えた姿勢のまま、身体は動いていない
何も出来なかった
足を踏み出すことも出来なかった
勝てる、なんて本気で思ってはいなかった
「………負けたんだよな」
隣で何か言ってる声が聞こえる
剣を構えて、そして………
勝てない、そう思った
思ってしまったらもうダメだ
例え、剣を振り下ろしたって敵う筈がない
次はせめて、攻撃ができる位になりたいな
 

END
 
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