衝動
 


 
何も無い空間
暗闇の中に蹲る
強い感情を押さえ込もうと身体を抱え込むように丸める
不意に襲われる衝動
叫びたい
暴れたい
破壊したい
沸き上がるのは負の感情
忘れた頃に襲ってくる感情は強く
何もかもを破壊してしまいたくなる
この感情は遠い名残だ
消化した筈の
終わった筈の
人生の熾火
過去の感情に支配される程弱くは無い
同時に
強すぎた感情を
後戻りの出来ない覚悟を覚えているから飲まれそうになる
衝動を感じると同時に逃げ込んだ何も無い空間
もし、もしも衝動に負けたとしてもこの場所なら
無意識の内にかける保険
あの当時の事はもう薄い記憶になった
あの時の感情も薄く
強い、強すぎた感情を思い浮かべる事はできない
それでも
今、あの感情にとらわれるのなら
全てを破壊してしまう
誇張ではなく、今の俺にはそれだけの力がある
だからこそ逃げ込んだこの場所で
不意に叫び出したくなる
声を上げ、救いを求めたくなる
これも、名残
遠い昔の感情
全てを呪う程の強い感情と
誰かに止めて欲しいと、救いを求める感情
「止められたんだけどな」
そっちの望みは叶った
残された筈の破壊衝動も消え去った筈だった
そうは言っても
―――誰にでもある感情
生きて
いろんな奴等を見て
どんなヤツにでも負の感情はあるって事を良く知っている
負の感情は決して消えない
ただ、こうやってなにかのきっかけで吹き上がってくる衝動は―――

強ばっていた身体から力が抜ける
くだらない事をつらつらと考えている内に引いた衝動
仰向けに倒れ込み、深く息を吸う
「………………」
突然襲ってくる衝動
あの時と同じ―――あの時以上の“破壊”を行おうなどと考えてはいない
それでも
まだ絶対的な信頼は出来ない
ゆっくりと息を吐き出し身を起こす
「帰るか」
アリオスの声に何もない空間が解ける様に消えていく
柔らかな光に笑みが浮かぶ
暖かく感じる温度に、心が動き出した


END
 
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