距離感
 


 
聖獣の宇宙を制定するにあたって
取り決められた様々な決まり事
その中にあって、ワタシが一番力を入れ、決定する迄最も長い時間を要したコト
それは、聖地の在り方
陛下達と民との距離感
近すぎず、かといって遠くない適切な距離感

故郷の宇宙―――神鳥の宇宙は、聖地は隔離された場所だった
女王陛下や守護聖に会ったコトがあるなんて人は居なかったし
そもそも、その存在さえ、信じていたのは極一部
大概の人にとってはただの伝説で
たんなるおとぎ話
………状況はもっと悪くて、そんなおとぎ話だって知らないって人も随分居たみたいダネ
聖地のヒトタチからすれば“けしからん”ナンテ言っちゃうようなコトだろうけど
それもトウゼンって言えばトウゼン
コッチ側―――民衆からすれば存在を示さなかった方が悪いってワケ
………聖地が閉じこもっていたワケ―――言い分も解らなくはないヨ
女王や守護聖に与えられた長い時間
それと、宇宙を見守るって仕事の為には、同じ時間を生きるよりも先に流れる時間を見つめる方がわかりやすい
デモサ
納得行かなかったんだよネ
普段は存在すら忘れられている様なヒト
そんなヒトが突然現れて―――姿を見せたワケじゃないケド
ワタシ達研究員が一生懸命考えて、努力していたコトをあっさりと解決して行った
解決ダケだったらまだましだったかもネ
ワタシ達―――ワタシが納得行かなかったのは
女王サマは何もかも解っていらしたってコト
宇宙崩壊の原因も手立ても手段も
何もかも解っていて、誰にも話さなかったってコト
バカにしてるヨネ
ワタシ達研究員がどれだけ賢明に原因を探っていたと思う
どれだけ必死に崩壊を止める手段を探って
どうにかして助かる手段を探していたっていうのに
女王ヘイカは始めから解っていたんダッテ
………守護聖タチと出会って、聖地で暮らして、少しくらいは考えるコトもあったケレド
聖地の時間は女王次第
過ぎ去る時間がどれくらいなのか全く決まってはいない
ソレッテ、やりたい放題ダヨネ?
寿命の違い
世界から取り残されていく
それってサ、今だって変わらないヨネ?
“外”で出会った人は、次にその場所を訪れた時にはもう居ない
それともほんの一瞬の出会いだからどうでもイイ?
ワタシは
私達の宇宙には
聖地って名の閉じた世界
おとぎ話の中のヒトタチ
そんな無意味な存在はイラナイヨ

ずっと抱えていたワタシの本心
だからサ
ここは神鳥の宇宙とは違う
違うからこそ造っていく新しいルール
向こうとは違う距離感
ワタシ達は確かにココに存在している
気まぐれにココから出かけても行く
聖地は開かれた場所で、危険な事象で無ければ誰でも受け入れる
難しい筈のルールは
次々と現実になって行く
………ワタシ以外のヒトタチの手が加わって

「ホント、協力的で助かるヨ」
ため息混じりの声が誰もいない執務室に響いた
 
 

END
 
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