羽根



その年最初に降る雪は、女王陛下の羽根
その最初の一片を地に落ちる前に手にした幸運な者は、ささやかな願いが叶えられる
いつしか広まったそんな伝承
いつから広まった物で
誰が広めた物なのかは知らないけれど
出来るならばその思いに応えたいってそう思った

「けれど、女王の翼は作り物だから」
そう言って、アンジェリークが困った様な笑みを見せる
「ウン、そりゃネ」
女王陛下になったとたん羽根が生えてきたら驚くヨ
なぜか知らないケド女王陛下の正装には背中に翼が付いている
勿論作り物だから動かす事は出来ないケレド
上手い具合に動きに合わせてさりげなく羽根が舞い散っている
短時間遠目で見るならホンモノに見えるカモ?
ってカンジだけど
「だからって、アンジェの背中にホンモノの羽根を生やすなんてコトは無理だよ」
本気でソレを望んで居る訳じゃ無いだろうケド
「背中に本物の翼が生えてくるのは私も困るかな」
あれって思ったよりも重いし、動きにくいもの
真面目に続けられるアンジェリークの言葉にレイチェルはそっとため息をつく
困るポイントがちょっと違うと思うヨ
「結局、アンジェはどうしたいの?」
マ、何となく解らなくもないけどネ
アンジェリークの返事を待ちながら、レイチェルはどんな手を使おうかと考えを巡らせた

「で、羽根を創るってのか?」
レイチェルに話を聞き、アリオスは深いため息をこぼす
「そ、アンジェの気持ちもわかるし、ホンモノにしたいって気持ちもあるしネ」
軽快にウインクをするレイチェルから眼を背け、アリオスは創られた羽根を指でつまむ
くるくると指の中で羽根が回る
重さも感触も鳥の羽根をつまんだ時と同じ
「良い出来だな」
中に投げた羽根がふわりとして雪へと姿を変える
「あーーっ、ちょっとっ!せっかくの作品を消費しないでヨっ」
サクリアを使って創られた作品
伝承と同じ様に
宙を舞う間は雪の姿を模し
人の手に触れれば羽根へと形を変える物
サクリアを元にしているだけあり、それは手に触れた相手の思いを伝える力を持つ
「ばらまくのか」
「そ、アルフォンシアの力を借りてネ」
ま、宇宙に陣取る聖獣の意思ならそれも労せず出来るか
「まぁ、それで良いのなら良いけどな」
各地でそれをやるとなるとどれだけの手間になると思っているんだろうな
“その地”に降る雪
その地の範囲はどこから何処までか理解し
その数を把握してはいないんだろうな
決して多くは無い羽根を横目にアリオスはそっとその場を立ち去った

最初の一片を手にする者はささやかな願いが叶えられる
誰もが知る伝承
いつの頃からかその後に付け加えられた一言
ただその最初の一片は毎年降るとは限らない

END
 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送