予告



ふと視線を上げる
辺境の小さな街
よく知った気配が傍を通った気がした
辺りへ視線を向けたが、見知った姿は見当たらない
感じたと思った誰かの気配も消えている
「気のせいか?」
そんなはずはない。
そう思いながらもいまいち自信は持てない
なぜなら、気配の主が誰なのかが解らないから、良く知っているはずの気配が誰の物かわからないから
少し遠くまで気配を探り、何処にも引っかかる気配が無い事を確認する
見当たらないな
どんな気配だったかは解らないが、少なくとも知っている気配は感じない
おかしい
すっきりしない気持ちを抱えながらも何事も無かったかの様に振る舞ったが、いつもの情報収集はその話をろくに聞かないままに終わった

出来たばかりだという古い城
わざと古めかしく作られた城の中で声が聞こえる
そんな話を聞いた
誰かの聞き違いや良くある怪談
話を聞いた者達は皆一様にそう解釈した
「別に変な気配は感じないわよね?」
そう呟いた彼女の言葉にやはり単なる噂だったんだろうとそう結論づけた
だが、声を聞いた
気まぐれで訪れたその場所で、確かに誰かの声を聞いた
聞き覚えのある声
すぐ後ろから確かに話し掛けられた
ただ、何を言われたのかは覚えていない
知っているはずの声も誰の声かは解らない
「気のせいじゃないな」
こんな現象も二度目になれば何かが起きている事は解る
ただ、それが何であるのかは解らない
「少し様子を見るか」
しばらく待ったが、声は聞こえなかった

湖のほとりで姿を見た
そんな噂話を聞いたとき
「またか」
とそう思った
同じ様に話を聞いていた者達は、それなら誰かが居たのだろうと特に問題にはしなかったが、きっと今までと同じ様に何かが起きると
誰も居ない事を確認して湖を訪れた
さほど待つこと無く、視界をよぎる姿
見知った姿だとそう思った
だが、その姿を思い返しても思い出せない
知っているはずの姿は記憶に残らない
あれが誰だったのかは解らない
良く知っているはずの者
すぐ近くにあって当然の者
………いや、そんな存在はまだ居ない
深く捕らわれそうになる思考に、ゆっくりと深く息を吐く
少なくとも、害がある様には感じない
その程度の勘は鈍ってはいないはずだ
もう一度湖に視線を向けるが誰の姿も見えなかった

誰かの気配を感じて
誰かの声を聞き
誰かの姿を見た
それは見知った者達で
まだ知らない相手
「いずれ正体を現すだろう」
そう結論づけてから、彼等が産まれたのはしばらく後の事

END
 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送