雪の夜


 
こんな、雪降る夜はそっと、大切な人と雪を見上げて……

人が寝静まった頃アンジェリークは一人宿を抜け出していた
ちょっと、寒いな
空からは昼間から降り続く雪が尚も降っている
夜の暗闇の中、昼間と同じように降り続く雪
アンジェリークは、手を差し出し、そっと雪を受け止める
冷え切った掌の上で、ほんの僅かな間、雪はその姿を留める
降り積もった雪が微かな光源となり、降りしきる雪を照らす
「奇麗だな………」
昼間とはまるで違った景色
小さな物音も聞こえないこんな静かな夜
顔を上げ、宿の部屋を見上げる
きっと、もう寝てるよね?
こんな遅い時間だもの、昼の疲れもあってみんな眠っているはず
アンジェリークへも雪が舞い落ちる
「さすがにこの格好じゃ、寒いかも……」
アンジェリークは小さなくしゃみを一つした

アリオスは小さな音で、ふと目が覚めた
未だ暗闇に包まれた時間
気のせい、ではないな……
宿の扉の開く音が聞こえる
部屋の中を見渡し、気配を探る
……何を考えているんだ?
こんな夜中に、何かあるとは思えないが……
僅かな躊躇の後アリオスは窓辺へと近づく
光源は僅かな雪明かり
夜の闇の中で僅かに浮かび上がる人影
「……何をやってるんだ?」
庭先で、数歩の距離を歩き、立ち止まる
こんな夜中に元気なもんだな……
雪降る夜の闇の中では、そのシルエット以外見分ける術がない
楽しげに?、それとも……
昼間楽しそうに雪を見ていた姿を思い出す
ふと、人影がこちらを見上げた気がした
細かな雪が舞い落ちている
……世話のやける……
アリオスは窓辺から離れ、部屋の外へと出た

「お前、何考えてんだ」
あきれた顔をしたアリオスの姿
「アリオス!?」
ええ?なんで、アリオスがここにいるの?
驚きのあまりアンジェリークは呆然とその顔を見詰める
「風邪引くぞ」
身振りで中に入るように言われる
「心配してくれたの?」
こんな時間に、心配してくれてるんだよね?
開かれた扉の内側へとアリオスに続いて入っていく
「うるさいのがいるからな」
風邪なんか引いたら大騒ぎだ
アリオスの言葉にアンジェリークは困ったように微笑む
そうかな……そうかも……
そして、気づかれないように小さなため息
でも、少しくらい……
「わざわざ外に出なくとも見えるだろうが」
なんとなくついてきた先は宿のロビー
暖炉には落とされたはずの炎が赤々と燃えている
これって
「少しは頭使えよ」
いかにも面倒だとでも言いたそうな口調
でも
「ありがとう」
聞こえないとでも言うように、その言葉は黙殺される
部屋の明かりに照らされて窓の外に雪が浮かび上がる
暗闇の中で舞い散る雪
「奇麗ね……」
つぶやいた言葉にアリオスは微かに頷いた

こんな雪降る夜は暖かい場所で、大切な人と二人で……
 
 

 
 

END
 
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