休息


 
頬を何かが撫でていく
強い緑の匂い
光が次第に強くなっている
……まぶしい……
不意に浮かんだ言葉

……まぶしい!?
閉じていた瞼が開かれる
その瞬間に差し込んでくる強い太陽の光
まぶしさに強く目を閉じながら、慌てて身体を起こす
「……起きたのか?」
え?
すぐ側で聞こえた人の声にアンジェリークは慌てて振り返った
逆光を浴びて見えるのは人影だけ
「こんなところで熟睡するなんて、たいしたもんだな」
皮肉っぽい口調、そして耳慣れた声
「アリオス!?なんで………」
私の部屋に……
そう言いかけた言葉は途中で途切れる
身体の下には柔らかな草花
慌てて確認するように見上げれば、青い空と高く昇った太陽が見えた
緩やかに吹く風が微かに草花を揺らす
「……私……」
こんなとこで寝てたの?
恥ずかしさのあまり頬が熱く火照る
「ずいぶん気持ち良さそうだったな」
すぐ近くで、楽しげに笑う声
……ずっと見てたの?
恨めしげに見つめる視線の先で、アリオスが草の上に寝ころぶ
まぶしげに目を細め、光を遮るように手をかざす
「まっ、わからなくもねーけどな」
こんな気持ち良い日は思わず寝ちまうってこともあるよな
「そっ、そうよね!」
同意する言葉に思わず力が入る
「…………普通は寝ねぇけどな」
そう言って意地悪な笑みを浮かべる
そんな事言ったって、気持ちよかったんだものしかたないじゃない……
ほんの少し情けない気持ちになって、視線を逸らして遠く地平線を見つめる
少しの時間をおいて、ゆっくりとアンジェリークは立ち上がった
……そろそろいかないとダメね……
きっとみんな心配してる
「戻るのか?」
穏やかな声にアンジェリークはしっかりと頷いた

見渡す限り続く草原
心地よい日射し
穏やかな休息の時間
幸福な一時に終わりを告げて、ゆっくりと歩き出した 
 

END
 
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