ツクリモノ


 
鋭い鋼の音
駆け抜ける騎馬の足音
そして、人の悲鳴

突然耳に飛び込んで来た音に彼等は身体をこわばらせ、慌てて背後を振り返る
背後には、硬直した少女の姿
彼女の側で戦場の映像が流れている
彼等はホッとしたように、身体の強ばりをとく
映し出されていたのは古い映画
悲鳴も、鋼の音もすべて作り事
作り事の映像に、思い思いの言葉がぶつけられる
不謹慎だとか、ひどいとか……
騒ぎ立てる男達の中で、1人端然とグラスを傾ける
騒がしい声
言い争う男達の狭間で、困惑したような少女の声が聞こえる
…………いつもの光景
冷ややかな瞳で、見ていた光景
―――イライラスル
にぎやかに騒ぎ立てる声に、席を立つ
「あ………」
振り返らずに歩き去る背中に、呼び止めようとする声が聞こえた

宿の外、星空の下
微かに冷たい風を身体に受ける
「なんだ、お前も来たのか」
間近からかけられる声
自分よりも先に席を立った2つの人影
「男二人で、何をしてるんだ?」
含みのある問いかけ
俺の言葉に反論しようとする姿と、素早くそれを押しとどめる姿
「どうやら、お前も同類のようだ……」
かみしめるように発せられる言葉
「誰が、お前らと一緒だよ」
投げやりな返事
人影からは、反論する声は聞こえない
彼もまた立ち止まり、空を見上げる
―――ナニヲシテイル?
立ち止まる自分にふとわき上がる声
立ち止まる必要などない、つきあう必要などない
頭の中をよぎる言葉、それに逆らうように動かずにいる

静まりかえった夜の闇の中
すぐそばに、無言でたたずむ人の気配
先ほどの映像が、音が、声が
頭の中を繰り返しよぎっていく
―――ソレハタダノ
「……作り物だ」
意識しないままに声となった言葉
視界の隅で、同意するように頷く姿が見えた

偽物ノ戦イ
偽物ノ死
不謹慎ダト声ヲ張リ上ゲル
偽善者ノ姿
だから
―――イライラスル

END
 
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