やがて訪れる再開


 
それは街の片隅で
人々が語る言葉の影に……
見え隠れする姿
けれど、決して出会う事の無い相手
それでも限られた世界では、偶然という名の出会いがある

ある晴れた日
アリオスはなんとなく、街の方へと足を伸ばした
普段なら人が多そうなこんな時間は避けて通る
誰かと出会うかもしれないから
知り合いと顔を合わる事になるかもしれない
別に気にしちゃいないが、俺と会いたいとは思わないだろう
あったところで気分の良いモノではない
それに………
ここにこうして居る事が分かればきっと一騒動持ち上がるだろう
ゆったりとした足取りで、町中へと足を向ける
かつての敵なんか、歓迎するやつはいない
寂しそうに笑う少女の幻影
……お前みたいな奴が特別なんだよ
心の奥でつぶやくのは
きっとただの言い訳
ただ、今はまだ、予測される彼等の態度が煩わしい

踏み入れた街の広場では、珍しく騒ぎが持ち上がっていた
人々の悲鳴の先
人々が見上げる建物の上に、知った顔があった
「何やってんだ……」
両手に大切そうに抱えているのは鳥の雛だろうか?
「動いちゃダメだよ」
屋根の上、不安定な格好をしたそいつに、集まった人々の間から声が掛かる
「大丈夫ですから」
青ざめた顔で、人々に笑いかける
………どこが、大丈夫なんだ
思わず口をついて出る深いため息
気乗りのしない、重い足取りで、ゆっくりと近づいていく
「ぼうや、いったいどこから登ったんだ?」
マルセルに問いかける男の声が聞こえた

子供が屋根の上から降りられなくなっている
街の人の言葉にランディは、その場所を目指した
「マルセルじゃないか!」
やがて見えた屋根の上
見慣れた姿に思わず大声を上げる
「知り合いかい?」
掛けられた声に返事もしないまま一目散に走り出した視界の中で、マルセルが、屋根の上から落ちた

しっかり捕まっていたはずの手が、汗で滑る
……どうしよう
助けを求めるこの子の声に気づいて、夢中で登ってきた
それまでは良かったんだ…
だけど、まさか、こんなに高いなんて思っていなかった
地上から、心配そうな人の声が聞こえる
まさか、あの人達に助けて、なんて言えないし……
落ちないように力を入れていた足がくたびれてきた
ぎゅっと目をつぶっていると、地上が少しざわめいて……
「……おい」
よく通る声が呼びかけた
あれ、この声……
「いつまでそうしてるつもりだ」
聞き覚えのある口調
おそるおそる目を開け、下をのぞき込む
「降りてこい」
……アリオス?
「ちょっとあんた、この子は……」
めんどくさそうに伸ばした手
え?
驚いて目を丸くした僕に、アリオスは、皮肉っぽく笑いを浮かべて……
あんまり甘く見ないで欲しいな
信用もしてるし、怖くもない
アリオスが声に出して言う前に、僕は思いきって飛び降りた

降りるというよりも落ちてきたマルセルを捕まえ、ゆっくりと地上に降ろしてやる
遠くから、必死で近づいてくる気配
マルセルが詰めていた息を吐き、顔を上げる
唇が動き、言葉をかたどろうとする瞬間、俺は面倒をさける為、その場から消え去った

ランディは呆然と立ちつくす人々をかき分けて、中央に立つマルセルの元にたどり着いた
「マルセル、怪我は!?」
見たところ、大きな怪我はしていない
ホッと安心したのも束の間
マルセルの様子がおかしい
「マルセル、どうしたんだい?マルセル?」
何度か肩をゆすると、ゆっくりと顔が向けられる
「ランディ?」
返事をしようとしたら突然反対に肩をつかまれて
「アリオスが消えちゃった!」
………え?

草を踏む軽い足音
柔らかな気配が近づいてくる
すぐ側で止まる足音
難しい顔をして、少女が立っている
ついてきてもおかしくないはずの気配は、無い
「あのね、皆様方がアリオスの事気づいてるみたいなんだけど……」
長い沈黙の後、おそるおそる切り出された言葉
……あたり前だろうな
「それで?お前は俺の居場所を教えた訳か?」
あるはずが無いと知りながら、問いかける
「そんな事する訳ないじゃない!それに……」
思った通りの反応
「それに皆様方もそれは絶対にしないっておっしゃったんだから」
予想外の言葉
意味が把握できず、アンジェリークを見つめる
「あのね………………」
囁かれる言葉に目を見張る
お人好しのばかばかしい言葉
口に出たのは、呆れたため息
そして、あまりのばかばかしさに笑いがこみ上げる
「アリオス?……アリオス?」
不思議そうに名前を呼ぶ声がばからしさに拍車をかける
あいつらと顔を合わせるのもそう遠く無いみたいだな
何か不思議な感覚が、心の奥底を流れた

END
 
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