こうすることの意味


 
後ろを振り返り誰もいない事を確認する
何度も辺りを確認して、知り合いの姿が無い事を確認する
誰にも知らせない事
誰からも見つからないようにする事
その存在がある事をみんなが知っている今では、無効に思える約束
もう時効だとか、でも約束を破ったら本当にいなくなってしまうかもしれないとか……
そういうことではなくて、それが約束だったから
アンジェリークは、その約束を守っている

辺りを伺いながら足早に立ち去る人影
「……まったくもぅ」
窓の外に、アンジェリークの姿を見つけてレイチェルは呆れたようなため息をつく
「なーんで、あれで気づかれてないって思うかなぁ?」
アンジェの秘密に気づかなかったのはほんの数日だけ
何か秘密を持ってる事なんて、態度を見ればすぐに気づいた
「いいけどね、どうせもうすぐ見つかるだろうし」
肩を竦めたレイチェルの後ろで
「あたりまえでしょ、いつまでも隠れられるはずないんだから!」
オリヴィエが声を張り上げた
アンジェリークの行動を見ない事にして、あくまで自分たちの手でアリオスを探しだそうとしている
アンジェは気づいてないみたいだけどね
「がんばってね」
レイチェルは笑みを浮かべて声援を送った

誰にも気づかれることなく張り巡らせた結界に触れる気配
良く知った気配を感じ、アリオスはその場に姿を現す

人気の無い草原
大きな木の下にいつも通りにある人影
自然に浮かぶ笑み
「アリオス!」

呼び声に顔を向ける
笑みを浮かべ息を切らせて走り寄る姿
他の気配を感じない事を確認して
人々を近づきたく無い気分にさせていた小さな結界を解き放つ
「あのね、アリオス」
結界の存在にも気づかず、アンジェリークが嬉しそうに声を掛けた

「今が絶好の機会なんだよ」
「解ってます」
さほど広く無い占いの館の中、盛り上がっている複数の人影
「……でも、オリヴィエ様……」
「いくらあいつでも、アンジェと一緒の時くらい警戒も緩むってもんだよ」
力説するオリヴィエの耳にはティムカの呼びかけも聞こえていない
「そうですよね」
同意するランディと、水晶球に眼をこらすメルの姿
「……ねぇ、ゼフェル………」
隅の方で呆れたようにその様子を眺めているゼフェルへとマルセルがそっと近づく
「僕、たぶん失敗すると思うんだけど……」
「んなの、分かり切ったことだろ」
「……だよね」
アンジェリークが出かけた今までだって、見つからなかったんだから

赤く染まった夕暮れ
さやさやと心地よい風が吹く
もうすぐ日が暮れる
「それじゃあ………」
「おい、待てよ………」
アリオスは、楽しそうに笑った

微かな音を立てて扉を閉じる
仮住まいの宮殿、アンジェリークの部屋の前
堂々と室内へと送り届けたアリオスは、当然の様にゆっくりと歩を進める
友人の元へと訪ねてくる軽い足音、気配
通路の曲がり角で足を止める
口元に楽しげな笑みが浮かぶ
足早に角を曲がってきた少女がアリオスへとぶつかりかけ、寸前のところで足を止める
「……ちょっと!!………!」
文句を言おうと、アリオスを見上げたレイチェルが凍り付く
「よう、よろしくな」
ニヤリと笑いかけ、次の瞬間アリオスの姿がその場から消えた
「ちょ、ちょっとー!」
その数秒後、我に返ったレイチェルの声が響き渡った

「なーんですって!?」
その数日後、オリヴィエの声が辺りに響き渡り……
「あの…オリヴィエ様…………」
闇の館へと乗り込む姿が目撃された

END
 
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