透明な翼


 
その背に広がっていく翼
触れる事のできない幻

遙か足元に見える星々
宙空へと足を踏み出す
ほんの数歩移動したその先では
つい先ほどまで居たはずの部屋も、そこへ続く扉さえも消え去っている
見えるのは星の光
何も無いはずの宇宙空間に満ちる人々の想い、願い
瞳を閉じ、微かな声に耳を傾ける
口元に浮かぶ慈愛の笑み
そっと広げられる両腕
押し寄せる想いを両腕に受け止め、ゆっくりと瞳を開く

顔を上げ、空を見つめる、受け止めた想いを祈りを還す力の発動
―――大丈夫
―――そばにいるから
―――あなた達が幸せに暮らせる様に……
沸き上がる力の発動と共に、背に現れる透明な翼
解放され、散っていく力と共に、幻の羽根が宙を舞う

微かに感じる力の発動
さほど間を置かず辺りを包む柔らかな気配
遙か上空から降り注ぐ力に引き寄せられたように空を見上げる
舞い落ちてくるひとひらの白い羽根
降り注ぐ羽根を人々は魅入られたように見上げる
きらきらと光を反射しながら
微かに透けて見える幻の羽根
舞い落ちる羽根へと手を伸ばす人々の姿
人の手が触れようととすると消えてしまう幻は
少しずつ
ひらひら、と舞い落ちてくる
消えてしまうのは、祈りが世界に染み込んで行くから
決して人の手に触れることのない力の結晶

やがて、聞こえてきたのは、羽根を欲しがり泣き出す子供の声
宥める大人の言葉に泣きながら訴える言葉に
諦めにも似たため息がこぼれる
注がれるはずだった愛情を求める子供の泣き声
泣き叫ぶ子供の側へと歩みより
空を舞い落ちる羽根へ向かって手を伸ばす
遙か上空で行われたソレと同じように
子供の強い想いを受け止め、そっと力に変える
優雅に空を舞っていた羽根が引き寄せられるように掌へと舞い降りる
「ほら」
子供の手の中へ消えることのない羽根が現れる
驚いたように羽根を見つめ、おそるおそる握り締め
消えないソレに、安堵の笑みを見せた

降り注がれるのは限りのない慈愛
すべてを受け止め、受け入れ守る為の力

祈りを込めた力が世界へと降り注ぐ
 
 

END
 
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