再会


 
アルカディアで商品を探すのは結構大変な事
その日も、俺は仕入れの為に、アルカディア中を駆け回っていた

「今日はこなんものかいな」
仕入れた品物の事を考えながら、近道しようと森の中を歩いていた
ここって、食料やら、自然物は豊富になんやけどなぁ
パッと見たたけでも木になる果実やら、キノコやらがあちこちにある
それだけ自然が豊かっちゅーことやな
でもな……
商品を包んだ風呂敷包みを背負い、夜の道を足早に歩く
「やっぱり、夜の森は不気味やわ」
街を少し離れてしまえば、夜の道は月明かりと、手に持った小さな懐中電灯だけが頼りになる
未だ安全とは言い難い大地
最近は、霊震なんて言うモノまで起きている
先日偶然会った、ジュリアス様に酷く怒られた事を思い出す
危険があるっちゅーのはわかってるんやけどなぁ
危険だからって、仕事せんってのは………
先日ジュリアス様に言われた言葉を頭の中で繰り返す
『ならば、誰か護衛でもつけるが良い』
いや、それはさすがにアレなんやけどな……
………………………
足早に歩くチャーリーの背後から、不気味な雰囲気が漂ってくる
「今日ばっかりは、誰かに付いて来て貰った方が良かったみたいやな」
距離からすればとうに森を抜けているはずだと言うのに、まだ森を抜け出すことが出来ない
さて、どないしよか?
歩いていた足を止める
振り返ったら、不気味な獣がいたりしたら嫌やな……
狙いを定めたかのように、気味の悪い気配が濃厚に成ってくる
やってやろうやないか
覚悟を決め、身構える
以前感じた凶悪な気配が辺りに沸き上がり、漆黒の影が見えた
うわ……
吹き付けてくるのは巨大な悪意
「なにも、馬鹿正直に襲ってくることないやんか」
全身に鳥肌が立っている
なんか、武器になるもんは………
必死で考えてる間に、不気味な気配はたわみ、押し寄せようとした
!!!
身を守る様に翳した腕
突然、不気味な気配が拡散した
……あれ?
「何やってんだ!」
突然消えた気配に戸惑っている、聞き覚えのある声が飛び込んできた
「アリオス!?」
目の前に、不機嫌そうな顔をした、アリオスが立っていた

「いやー、ほんま助かったわ」
あの後、どっかに行ってしまおうとしたアリオスに無理矢理頼み込んで、街までの道を一緒に歩いている
「……………」
アリオスから返ってくるのは、まさに呆れ返ったっていう視線
そりゃ、怖いから護衛してくれなんて言った俺も俺やけど、何時までもそんな顔せんでもええのに
「それにしても、まさか、こんなとこでアリオスに会うなんて思いもよらなかったわ」
「そりゃ、こっちの台詞だ」
アリオスは、獣道すら無い森の中を躊躇う事無く足を運んでいく
「こんな時間にこんな場所をうろつく物好きが居るなんてな」
俺は来たことも無い森の中やけど、アリオスはそうでもないっちゅーことかな?
「……いや、お前だから、うろついてたのか?」
「どういう意味ですのん」
前と変わらないアリオスの口調に少しホッとする
たわいのない事を話しながら、森の中の夜道を街へと向かう

決して姿を現そうとしなかった
さっき俺を助けた後、すぐさま立ち去ろうとした
声を掛けて、腕掴んで引き留めて
『あいたかったでー』
って、感激のあまり抱きついたら
すごい驚いて、そしてすぐさま振り払われたけど
一瞬、ほんの一瞬
嬉しそうな、泣きそうな顔をした気がしたんや

見覚えの有る場所
森の中に自然に作られた道へとたどりついた
遠くに、街の灯りが見えるその場所で、アリオスが足を止める
「ここまで来れば、迷いようがないだろ?」
「そりゃ、迷いはせえへんと思うけど……」
腕組んで、側の木の幹により掛かってる姿は、これ以上行く気は無いって主張している
無理矢理引っ張ってくって訳にはいかへんしな
「アリオスは、行かへんのか?」
きっと行かへんっていうやろうけど
「俺は俺で用事があるんだよ」
口元に微かに浮かぶ笑み
「そっか、ほんならしゃーないな」
その顔が、素直な笑顔やったから、俺はすんなり引き下がる事にした
「今度送ってくれたお礼するさかい、遊びにきてや」
アリオスが、さっさと行けって感じで、投げやりに手を振る
会った時の態度から、アリオスには、俺等にあんまあいたくないっちゅーのはわかる
なんであいたくないのかも、なんとなくやけどわかるつもりや
でもな、もうえぇんとちゃうかな
あんたは“アリオス”なんやから
「絶対に来てや、約束やで」
そんなん思っても、言葉に出すのは恥ずかしいちゅうか……
とにかく、俺の感情を目一杯詰め込んでアリオスに約束してもらおう思った
一度約束してしまえば、守る人やっていうのは解ってるから
約束事は、これだけは譲れへん言う気迫が勝負や
「………………」
「………………」
どれくらい時間がたったやろか?
じっと、お互い一言も口を聞かない時間が過ぎた
「……解った」
根負けしたアリオスがようやくそう言った
「ほなら、待ってるわ」
約束も取り付けた事やし、俺はアリオスが何か言う前に思てさっさと身を翻す
「おい、他の奴に知らせたりするんじゃねーぞ!」
慌てた様なアリオスの声
……そやな…ソレぐらいは勘弁しとこか
「わかってるわ」
振り返って、叫び返した視線の先で、疲れた様な表情を浮かべたアリオスが姿を消した

柔らかな街の灯りの中
チャーリーは、ゆっくりと帰り道を歩き出した
それにしても、相変わらず律儀なお人やなぁ
歩きながら、先ほどのアリオスを思い出し、チャーリーは、笑みを浮かべる
俺の言葉なんか無視して、そのまま消えてしまうっちゅー手もあったはずやのにな
そのまま、俺に付き合って、折れて、ちゃんと見送るやなんて
やっぱアリオスらしいわ
俺は楽しい気分で、夜道を家に帰った

―――後日
やっぱりあれほど濃厚な悪意っちゅーのは守護聖の方々には筒抜けやったらしくて
俺が、アリオスと会ったって事は皆に知られる結果になった
その結果、連日オリヴィエ様が襲撃してくるようになった
「チャーリーー!!」
………………………
「今日はなんでしょ?」
ああ、笑顔が引きつってないやろか?
さすがに、毎日アリオスの行方問いつめられんのはつらいわぁ
最近聞き慣れたオリヴィエ様の声を聞きながら
この分だと、アリオスが遊びに来るのって当分先やろなぁ
なんて事を思っていた
 

 

END
 
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