力の質


 
誰も居ない約束の地に風が踊る
舞い踊る風が収まった瞬間、人影が出現していた

覚えのある感覚
……魔導の発動
ごく近くで感じたその力に足を止めた
消えた気配?
それとも出現した気配かしら?
しばしの思案の後、彼女はゆっくりと足を運んだ

何をするでもなく、空を見上げる
穏やかに晴れた空
ゆっくりと空を雲が流れていく
……大丈夫だな
辺りにしみこんでいる気配を探り
アリオスはそう結論づけた
まだ、力のバランスが崩れていない
虚空に浮かぶ小さな世界を覆った3つの力のバランス
均一に巡らされた力のバランスが崩れた時
……その人物に限界が訪れる事になる
アリオスは高く息を吐き出し、呼吸を整える
幾度か小さく繰り返される仕草
呼吸に合わせ、徐々に高められていく力
どこか女王のサクリアに似て、まったく異なるモノ
力強い波動が空に向けて放たれ、消える
再びアリオスは空を見上げる
目を閉じ、世界に満ちる力を探る
柔らかく受け止められ
水が大地に染み入るように力が吸収されていった

約束の地へと足を踏み入れ
ふと足を止める
力強いサクリアの発動
感じ慣れた女王のソレにも似た不思議な感覚
じっと目を閉じ、その力を受け止める
ふと思いついて、いつものように放たれたサクリアに同調してみる
あの子の力を補佐する様に………
通り過ぎ、世界に溶け込もうとしていた力の一部が集まってくる
いつもと同じで、まったく違う感覚
それでも……
私の力と同調しているわ
受け止めたサクリアを高め、そっと解き放つ
……同じだわ
感じ慣れた感覚
女王のサクリアに触れた時と同じ感覚
微かに残っていたサクリアの残滓を振り払い、ロザリアはゆっくりと目を開けた

ゆっくりと歩いてくる人影
こうやって対面するのは初めて、だな
アリオスの眼に青い眼をした少女の姿が見える
先ほどの不思議な力の流れ
アレはこの女の仕業だろう
アリオスはただじっと立ちつくしたまま、ロザリアの到着を待った
「ごきげんよう」
「………………」
黙ったままのアリオスに近づき、ロザリアは柔らかな笑みを浮かべた

振り返った視線の先に銀色の輝きが見える
消える事無く見送るアリオスの姿
『優しい人だと思うわ』
不意に親友の言葉が思い浮かぶ
「そうね、確かにその通りだわ」
驚いたような彼の表情と
そして、最後に見せた穏やかな笑み
ロザリアは、今日の出来事を報告するために、足早に住まいへと向かった
 

 

END
 
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