信頼


 
時折、この小さな世界に張り巡らせた力の状態を調べる為に意思を放つ
世界を巡る力に嬉しげに寄り添ってくる何者かの存在
どこからともなく寄り添う意思は、足りない―――消耗した―――力を補給するかの様に、アリオスへと手を伸ばす
信頼しきったその様子に、アリオスは呆れながらも嫌な感じは全く感じられなかった為、好きにさせていた

次第に強く、世界を覆い始めた女王達の力に反発する様に邪悪な意思が力を示し初めて数日
アリオスは、守りの力にほころびが生じていないか、確認の為力を解放していた
いつもの様に張り巡らせた力をなぞるように広がっていく自分の力
隅々まで、張り巡らされる頃、いつもの様に、近づいてくる力を――気配を感じた
………?
いつも通り近づいてくる気配に感じる微かな違和感
力へと手を伸ばすその様子に、相変わらず嫌な感じはしない
無邪気に絡みついて来た先日までと違い、そっと遠慮がちに触れてくる気配
まるで、別人の様な態度
アリオスは興味を覚え、相手へと近づく
邪悪な気配は欠片も無く、どちらかと言えば、聖なる気配とでも言うような……
よく知った相手に似た力
知り尽くした力に似た力
そして、どこか懐かしい気がする気配
守る為の力、支える為の力
慈しみに満ちた聖なる気配
「………お前………」
脳裏に浮かんだ一つの名前
遠慮がちに伸ばされていた手が、ゆっくりと離れていく
流れ込んでくる礼を告げる思念
以前までの余裕のない態度とはほど遠く
どこか、大人びた雰囲気が感じられる
『どうか力を……………』
立ち去っていく相手から伝わる願い
頼みながらも、裏切られない事を確信した思念
信頼しきった思念
全く、人使いの荒い奴等だ
聖なる生き物の気配を察し、暴れ出そうとする邪悪な思惟を押さえつけながら、アリオスはため息を漏らした

銀の大樹の大きな幹にアリオスはそっと手を伸ばす
触れた瞬間呼応する様弾ける光
感じ取れる柔らかな思念
そして、すぐ側に現れる希薄な人影
アリオスは、少しだけ意地悪な笑みを浮かべ彼へと話しかけた
 

 

END
 
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