眠りの時間
 

訪れる人も滅多に居ない森の奧にぽっかりと開けた空間がある
見上げた空は目に痛い程の青が広がっていて、雲一つ存在しない
時折吹く風が微かに木々を揺らして小さな物音を立てる
こんな天気の日、時折思い出したように訪れる場所
何をする訳でも無いと言うのに、自然に足が向いている
何も無い場所
誰も居ない場所
ゆったりと流れる時間に、心地よい静けさ
感じているのは
―――安堵感
さやさやと風揺らす木々の音が囁く
心地よく感じる響きは、柔らかく心を静めていく
空から降り注ぐ虹色の光
ゆったりと色を変えて行く様は、安心感を与える
そして、身体を暖める心地よい気温
やがて意識が眠りの中へと引きこまれていく

森の中、深い緑に抱かれて眠りに落ちる彼の周囲を取り囲む様に淡い光が生まれる
滲み出た光はやがてはじけ
眠り続ける傍らに、形を成す
人影にも見えるソレは、彼の傍へと寄り添う様に留まる
彼の意識は顔を覗き込む気配にも気付かぬまま、穏やかな眠りの中
ソレが笑みを浮かべる
そして、空へと目をやり
降り注ぐ光から彼を護る様に手をかざす
手をかざす気配を感じたのか、微かに動いた彼の姿に小さな笑みを浮かべた

日が暮れ、気温が下がる頃
常に無いほどの深い眠りからの不意の目覚め
ただ一人身を護る術も無く、こんな場所で眠りに陥る等あってはらない
……それはコレがここでは無ければの話
充分に取れた休息に満足し、いつもの様にこの場所を去る
「また来る」
いつもの様に言葉を残して

彼が去った後に揺らぎ現れる人影
表情の少ないその顔が嬉しげに笑う
ここは忘れ去られてしまった場所
この不安定な世界で、ただ1つだけ残る聖地
封じられた自分が出来る精一杯の事
彼がこの一時だけは何も心配無く休む事が出来るように………
遠ざかっていく気配を見送り、再び姿を消した
 

何もかもが穏やかに在る
そんなある1日
戦いの中の、休息の時間

END
 
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