偶発的出来事


 
見知らぬ土地へと飛ばされてからだいぶ時間がたった
様々な事が判明し、様々な事が不明のままだが
今のところデータ上は、育成は順調に進んでいる
問題なのはデータの上というところだ
育成が進むにつれ、予想しなかった問題が現れている
今のところ問題は無い様に感じるが、何かあってからでは遅い
毎日の様に注意すべき箇所、注意点などを話し合い気をつける様にしているが、どうにも手が回らない箇所ができる
幸いにして今のところ大事には至っていないが、不本意ではあるがそのうち大事に至る可能性もある
「手が借りれればよいのだが………」
そんな言葉を聞いてから数日、森の中で偶然その姿を見かけた

気配を感じた
続けて、力を感じる
隠す事のできない力の波動は、すぐ近くに誰が居るのかを知らせている
巡回の途中なんだろう、辺りをうかがう様子に、すぐさま背を向ける
こんなところまでやってくるとは、ご苦労な事だぜ
そんな事を思いながら消え去ったのが1回目

仲間達の中から伝えられる情報
前日までそんなそぶりを全く見せなかったやつらから伝えられる情報の数々は、その出所が誰なのか、言葉にでは伝えられなくとも明確に教えている
危険と思われるところ
早急に手を打った方がよいと思われるところ
緊急と思われるところは重点的に実情の確認が必要になる
危険が予測される場所へと赴く事のできる人間はほんの僅か
守護聖で無ければ危険を伴うと思われる場所へ行くことができるのは………
必然的に出向いた場所で、発動される力を感じた

負の力が溜まりやすい場所というのは存在する
アンジェや守護聖達のサクリアで霧が晴れた場所でも、広範囲の中の一部にたまたまそういった場所があれば、その部分にだけ残留思念の様にいやな気配がこびりついている事がある
こういった場所は、今まで霧の中で眠りについた奴等が目を覚まし何も知らぬままに引き寄せられる
一度霧の外へと出てしまえば、おかしな話だが守りの力は働かない
僅かでも守りの力が働いて居た時とは違い、深く凝り固まった思念の中へ無防備につっこんで無事で居られる筈がない
「本当ならあいつらの仕事だろうがな」
悠長に待っている間に、間抜けな住人の1人や2人不用心に足を踏み入れる
いちいち彼奴らに知らせて手を打つのを待っているよりは、自分で片づけた方が早い
アンジェの力が満ちた空間の中で、強く感じる不快な力
どす黒い残留思念を払い終えて次の場所へ移動するのとほぼ同時に、1つの力が出現した
今回は早かったな
発動されるサクリアを感じながら行き先を変更したのが2回目

引き続き届けられる情報
情報を持ってくる人間の数が半数以上を占めた頃
ようやく、アリオス本人の事も話題にあがる様になった
出会った時の状況、どの辺りで出会ったのか
本人の事も気にはなるが、もたらされる情報のおかげでオリヴィエ達の仲間に入る暇はなさそうだ
そろそろ他人経由というまどろっこしい手段よりも、直接の情報の方が手間がかからなくてよいと切実に感じ始めた頃
緊急性はなさそうだが、この事件の根本と関わりのありそうな場所、事象を調査中
ぶつかり合う力のただ中に足を踏み込んだ

アンジェ達の手による育成―――解放―――は順調に進んでいる
だが、順調だからこそ抵抗し、反発する力が時折強く吹き荒れる
反発の力、抵抗の力が集中するのは、敵である相手と繋がった場所
―――あの存在が封じられている場所
ごくまれに現れる空気の歪み
いやな気配と共に感じるこの現象は、どうやら反発の力が押し寄せる前触れ
気がついてしまえば放っておく訳にもいかない
いつもの様に揺らぎを感じて現れた銀の大樹の元
押しよせてくる憎悪の相手をしたその瞬間、手助けするようにサクリアが割り込んできた
辺りに目をこらせば、どうやら元からここに居たらしい人影
そういや、確認するのを忘れていたな
割り込んで来た力を遠慮無く利用しながら悪意に満ちた力を追い返したのが3回目

朝から雨が降り続いている
激しい訳ではないが、外出する気を無くさせるようなそんな作為に満ちた雨
かすかに肌寒く感じる外の気配に、暖炉に炎を入れたのは数刻前
『雨がひどくてな、雨宿りさせてもらえるとうれしいんだが』
“雨宿り”の言葉に沿うつもりなのか、ご丁寧な事にオスカーは手みやげを手にずぶぬれで現れた
ため息と共に招き入れてから身体が乾く位の時間は過ぎた
「実は相談があるんだが」
さわやかに切り出されたのがつい先ほど
「面倒ごとなら断るぜ」
答えを返しながらも、面倒ごとに巻き込まれる未来が予測できた

そして一晩明かりが消える事はなかった
 
 
 

END
 
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