確報


 
「やっぱりそうだと思ったの」
「ほら、言った通りじゃない」
エルンストから急報があるとの言葉で招集された会議の場
告げられた言葉にミンナが戸惑う中、そう言ったのは、女王陛下とロザリアサマ
手を取り合って、頷き会うその姿をワタシ達はしばらく呆然と見ていた
「あの………」
声を失ったワタシ達の中、一番初めに我に返ったのはアンジェだったみたいで、お二人に恐る恐る声をかける
アンジェの声に漸くワタシ達の様子に気が付いたのか、お二人とも咳払いをして態度を正す
「それで、詳しいことを聞かせてくれるかしら?」
エルンストに向けて女王陛下が改めて説明を求めるけれど………
「………気がついていたんですか?」
ワタシ達の視線はお二人をじっと見つめたままだった

『力を使えばすぐに解るわ』
そう言ったのはロザリアサマで
『レイチェルならきっと私よりも明確に感じる事ができると思いますわ』
ワタシへ向かって微笑みながら、言葉を続けた
女王陛下の方は、ロザリアサマの言葉を受けて、言われてみればと、思い当たったそうなんだけど………
ワタシもアンジェもちっとも思いつかなかった
ほんのチヨット救いなのは守護聖様方も気が付いていなかったと言うこと
………多分、ネ
ホントに気づいていなかったのかアヤシイ方も居るけれど、それはこの際気づかなかった事にして、気が付いても可笑しくない人が気づいていなかったっていう事をチョット慰めにする
考えて見れば、ワタシはそういう場面に居合わせたことが無いし
情けなくはあるけれど、アンジェ関連の事で手一杯で細かいところまで気にしている暇は無かった
悔しいけれど、これから同じ失敗を繰り返さない事が重要って事にして
納得いかないけれど、納得した
そうやってワタシは言い訳をどうにかひねり出したけど、アンジェの方は上手い言い訳も出てこなくてちょっと落ち込んでたりする
気づかなかったっていうのはミンナ一緒だし、元々アンジェは前向きだし、そんなに心配はいらないカンジだけどね
とりあえず、この辺りのワタシ達の複雑な感情は置いておく事にして、ワタシはロザリアサマの言う“明確に感じる”って言うのを実体験する為に、アルカディアを走り回った

気配を感じる
どういう訳か最近特に、霧が晴れた跡に彼奴等の気配を感じる
現状を打破する為に本腰を入れた、とも取れなくもないが、守護聖以外の奴等までうろちょろしているとなると一概にそうは言えない
以前渡したデータに示された場所が次々と回復していく
この場所にとっては良い傾向なのかもしれないが、危なっかしい
さすがに危険な場所には足を踏み入れないだけの分別はあるみたいだが、お子様連中が、おかしな所に迷い込んだりするんじゃないかと、どうにもはらはらする
―――何やってやがるんだ?
彼等の居る場所を上手くすり抜けながら、アリオスは自分に出来る事を消化していた

森の中や草原の地、深い霧に覆われていたその場所でサクリアが知らせるママに出会うのは守護聖サマばかり
なかなか目的の人物には会えないし、会えなければ体験する事も出来ないし
他にアリオスが力を使う場所は、約束の地
それと危険だから近づくなって言われている銀の大樹
銀の大樹の方は、どんな状態なのか知りたいしいずれは行ってみるつもりでいるけれど、報告を見る限り今はあんまり近寄らない方が良い様に感じてる
そうなるとあとは約束の地か
あそこで会える可能性は薄いんだヨネ
邪魔される事を嫌い張り巡らされる結界を思いレイチェルはため息をついた

小さな世界へと意識を向ける
世界を満たす柔らかな力
大勢を占める力の中に、歪んだ暗い気配を感じる
次第に居場所を弱めたソレは濃度を増し、一箇所へと身を寄せている
時折、ソレが鎌首を伸ばす
その近くで漸く力を取り戻し始めた存在へとアリオスは力を贈る
身体の奥深くからあふれ出る力
1つの流れを造り、ソレへ届く筈の力が何かに引き寄せられ形を変えた

期待しないで向かった場所で、探し続けた姿が見えた
居なくなる前にと走り寄った足が不意に止まる
カレからあふれ出る“力”
初めて感じる、ワタシが識っている力の形
ワタシ達の宇宙に在るべき存在、無くてはならない存在
―――その願いのままに、在るべき場所へ
レイチェルの内からサクリアがあふれ出る
心地よい感覚に身を委ねながら、レイチェルは宇宙のあるべき姿を理解した

『アリオスからサクリアを検出しました』
エルンストが伝えた言葉が、ちょっとした騒ぎの始まり
教えられた事実を元に確認した事柄
今日の目的は“確認”する事だから構わないけど………
レイチェルが気が付いた時には、アリオスの姿は消えていた
「問題は本人が解ってなさそうな所カナ」
理解していればこの期に及んでレイチェルの元から姿を隠す必要なんて無い、はず
ま、ひねくれ者みたいだから、解っててやってる可能性も否定できないけどね
「さて、アンジェに報告に行かなきゃ」
カレはワタシ達の宇宙に絶対に必要な人
閉ざされたこの場所で出会えたのはきっと幸運
どこかへ行ってしまう前に―――事件が解決する前に、早い内に確保しておかないとっ
 
 
 

END
 
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