目撃


 
その光景をセイランが見たのはただの偶然
いつもの様になんとなく散歩に出た先で聞こえた賑やかな子供の声
いつもなら、遠回りをしてよけいな接触をしないようにしていたが、ただなんとなくそのまま子供達が遊ぶ側の道を選んだだけの事
どこにでも在る光景、だった
何の変哲もないごく普通の光景だった
………つい先ほどまでは
1つの出来事がセイランの足を止めさせた
子供達の中心に居る1人の少年
彼の行動に人々の視線は集まっている
彼の行う事に目を奪われ、息を飲む
「………へぇ」
セイランが詰めていた息を吐き出す頃、子供達の集団は遠く走り去っていた

2度目にセイランがそれを目にしたのは必然
セイランはスケッチブックを片手に先日とはまるで違う場所を訪れた
開けたその場所で遊ぶ前日とは違う子供達の集団
邪魔になる事も無いだろうと、離れた場所へ腰を降ろし、何気なく子供達の集団へ視線を向けた
目に映った光景は、先日のそれと似通ったモノ
1人の少女を中心に子供達が集まっている
―――もしかして
何となく働いた直感のママにその光景に注目する
少女を中心にして現れる微かな光
そして―――
「………なるほどね」
歓声を上げながら子供達が駆け抜けていった

そして、3度目は計画的に………
翌日セイランはまた違った場所へと足を運んだ
そして、1度目とも2度目とも違う子供達の集団を見つけ出し
楽しげに遊ぶ彼等の元へと近づいていった
「ちょっといいかい?」
幾つもの視線がセイランへと向けられる
「君たちの中に―――」
セイランの問いかけに2人の子供が手を挙げて
そうして、セイランの頭上を突風が吹き抜けた

「ちょっとつきあって欲しいんだけど?」
目の前へ突然顔を出したセイランがそう言って、強引に人を引きずったのは幾分前の事だ
「………いったいどこに行くつもりだ?」
足を向ける先は、中心地でも、彼奴等の元でも無い様だから妥協して着いてきたが、目的地も知らされないまま、1時間ほど引っ張り回されているんじゃあ、そろそろ我慢ならねぇ
「目的地と言うより、目的の相手なんだけどね」
アリオスを追い立てる様にして、セイランが、木々の間を進み
空き地と呼べる程には開けた場所へと出る
「ああ、居たね」
確かに広場には人の姿がある
「………子供じゃねーか」
子供とセイラン?
どうやったって、結びつかねーぞ
違和感に首をひねるアリオスを構うことなく、セイランが子供達へと近づき声をかける
幾つか交わされる言葉
そして………
―――っ
目の前で起こった光景に
精神へと触れる感覚に
アリオスは息を呑む
少し年嵩の少年の手から生み出された光
それは良く知ったモノ、良く知った力
「魔導だとっ」
驚き目を見張るアリオスに
「どうだい、驚いたかい?」
楽しげなセイランの声が聞こえた

―――どうやらこの地では魔導っていうのは、それなりに身近な力らしいよ
アリオスは注意して見ることもなかった、子供達の様子をじっと見つめる
―――そして、魔導の力が存在するのは自然の事だし
子供の内の1人が覚えた手の力を披露する
―――この力を使える人がいるのも極当たり前の事
小さな力の発動に沸き上がる歓声、拍手の音
―――ここはアンジェの宇宙の未来、だったよね
良く気をつけてみれば、小さな力の発動の気配が強い力の気配の中に紛れ込んでいる
―――気になるなら、もう少し人々の世間話に耳を傾けると良いよ
楽しげに告げたセイランの言葉が脳裏を離れない
「いったい、何だって言うんだ」
すっきりしない感覚に、アリオスは盛大な舌打ちを零した
 
 
 

END
 
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