無意識


 
ただ意味も無く手を伸ばす
伸ばした手を握りしめる
何もない空間で、手に触れる物は何もない
………当たり前だ
無から有をつかむこと等できる筈はない
そう解っていながら、同じ動作を幾度か繰り返す
寝ころんだまま、空へ腕を伸ばして、手を握る
握っては伸ばす
特にこの行動に意味は無い
ただ、何となく
気が付けばやっている

眠りから開いた目に、太陽の光がまぶしく降り注ぐ
光を遮る為に手をかざす
そこから無意識の内に手が伸ばされる
伸ばした手を開き、握る
――――っ!?
握った手に何かが触れる感触がして、俺はそのまま勢いをつけて飛び起きた
目の前に身体を硬直させたアンジェリークの姿がある
向こうも驚いている様だが、俺も負けずに驚いている
………アンジェ?
俺が握りしめた手は、しっかりと彼女の手を握りしめている
開いた手の中に滑り込んできた掌
「………びっくりしたぁ」
ぺたりと、すぐ側へ座り込んだアンジェを、俺は呆然と見つめる
………びっくりしたのはコッチの方だ
「もぅ、アリオスってば突然起きあがるんだもん」
些細な文句を言うアンジェリークの様子からすると、アリオスが寝ていたとは気が付いていない
「そりゃ、悪かったな」
乱暴に言葉を返しながら、アリオスは表情取り繕う
たわいのない言葉の遣り取りをしながら、気づかれないように息を整える
こんなに驚かされたのは、久しぶりだ
軽く握った右手の中に、小さな手の感触
ゆっくりと手を離すと、微かにアンジェリークが残念そうな顔をした

無意識に手が伸びる
伸ばした手が手に触れる
握りしめた手を引き寄せる
驚いたように見つめた顔が、嬉しそうにほころぶ
無意識の行動
ただ、いつもの様に手が動いただけだ
手繋いだまま、アリオスは視線をそらし再び草の上に寝ころんだ
 
 

END
 
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