黙許の理由


 
世界に溶け込んだ気配の持ち主が通り過ぎていく
少し不本意だけど、嫌になるほど良く知っている気配
彼の存在が確認されたとき、伺うように私を視ていた彼等の視線
“あの者は侵略者です!”
なんて声を荒げたくせに、私が処罰する意志はないことを告げると、あからさまにホッとした事くらい知ってる
あの後二人きりになってロザリアが随分守護聖の態度に関しては怒っていたんだけどね
確かにね“侵略”だもんすんなりと許される訳が無いって誰でも思うよね
………私だってそう思うもん
というかね、私の言葉
生まれ変わったから罪は無いっていうあれ
あれは、確かに理由の一部にはなってるけど、それで許した訳じゃないんだよね、本当は
だってあの人ってば、その当時の記憶は持っているし
力だってそのままだし
―――最近になって、それ以上の力を有している事が判明したけど
同一人物以外の何者でも無いじゃない!
そう思って―――間違いなく事実だと思うけど
適切な罰を与えてたわ
………彼じゃなかったら
彼の存在に気づいて、ロザリアに罪には問わないってそう告げたとき、ロザリアは当然反対するものだと思っていたわ
けれど違った、ロザリアはすぐに賛成してくれたわ
ロザリアはどうして反対しなかったのか、それはまだ不明
その事に関してはまだ話していないから
そのうち話すかも知れないし、ずっと話さずに終わるかも知れない
大気中に鋭くも暖かな力が溶けていく
力の質は、変わっていない
守護聖達やあの子が視ていた“アリオス”という存在を私は知らない
でも私は“レヴィアス”という名の存在なら彼等よりも良く知っている
私はね、アリオスが“レヴィアス”という形で戻ってきたとしても許しを与えていたわ
彼は確かに侵略者で、実際に侵略行為を行ったことは確かだけど………
彼は結局誰一人殺める事は無かったわ
私の宇宙の生き物をモンスターになんて変えてくれたけど、それはそれだけ
モンスターを倒したら、彼等は元の姿に戻るのよ?
精神的な苦痛を背負うことになるかと思えば、その間の事なんてほとんど覚えていないみたいだし
結局、私の宇宙の生き物で彼に殺められた者は一つも無かったわ
そして、それは私達にも言える事
守護聖に関しては情が移ったって主張を認めてあげてもいいけど
私とロザリアに関してはそうはいかないでしょ
サクリアを搾取し終わる迄生かしていただけ、なんて言ってたらしいけど、あれは大嘘よ!
あんなもの、私の負担を考慮しないなら、一気に吸い取っておしまいじゃない
ちまちま時間をかける必要なんて全くない
それと私達がなんの手出しも受けずに塔の中に居たこと
中に入る事は簡単だったわ
私達に手出しする事もとっても簡単だったわ
でも彼はもちろん、彼の部下さえも私達に何かをしようとはしなかった
そして、私が女王だから知った事
私の宇宙は確かに彼を受け入れていた
どれほど鈍くて、どれほど憎しみに目がくらんでいても変な事くらいは気が付くわ
―――私は彼を観察していた
彼はそんな事気づきもしなかったでしょうけど
私はロザリアと共に彼の事を視ていた
だから私はレヴィアスの事なら知っているわ
レヴィアスという人物の中のアリオスという人格
………守護聖達もアンジェもきっとそんな風に認識している
だけど………
考え事をしながら歩いてきた私の足が止まる
私の視線の先に友人達に囲まれた彼の姿が見える
鼓動が一つ脈打つ時間、私は躊躇って
彼等の元へと近づいていく
―――本当は、アリオスという存在の一部がレヴィアスだったと言うことを私は知っているの
私にかけられる数々の言葉を受け止めながら私は彼へとほほえみかける
あなたがあなただから
「今日も良い天気ね」
だからあなたを許したの
 
 
END
 
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