静寂が続いている 強大な力を誇っていた筈の“敵”は何の手出しをする事も無く息を潜めている まるで、退散したかの様に 滅ぼす事を諦めたかの様に 何もかもが解決したかの様な錯覚は 幾日もの間静まり返ったままの大地と 勢力を縮小していく“霧”のせい あちこちに満ちていた不気味な気配もほとんど感じなくなった 代わりに、空気に融け込んだ柔らかな気配 ―――言うヤツが言えば聖なる気配ってやつだろうが、そこまで大層なものじゃない 元々この地に住む人々は、おかしな事も危険も全て片づいたと思っているのか 既に緊張感の欠片も無い 道行く挨拶代わりに過去形で話をするだけだ 確かに勢力図は一変した とりあえずの危険は去ったと言えるかもしれない だが……… “敵”である存在 あの不気味な存在がそう簡単に諦めるとは思えない このまま、消滅を待つような甘い事はしないだろう そろそろ、覚悟を固める時期だな ただ一つ、時間をおく毎におかしな気配に変わっていく場所を鋭い目で見つめた 「あの場所が問題だ」
夜人々が寝静まる頃
END
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