コミュニケーション


 
ため息が零れる
把握しきれていない世界の実情
そして、相変わらずの詰めの甘さ
もう少し真剣に考えたらどうだ?
言ってやりたい言葉をため息と共に飲み込む
「お前等、何してんだ」
掛けた声に疲れが滲んでいるのは致し方ない
………こいつらの姿を見た途端どっと疲れが沸き上がった
問いかけに的を外した答えが返る。
聞いた俺が馬鹿だった
っていうべきか
………こいつら解っててやってるんじゃないか?
相変わらずの集団に白旗をあげて中に招き入れた時点で、俺の負けは決まっていた

無理やり取り付けられた協力要請
“敵”の存在自体にアリオスが出来ることは無い
思い出したくも無い過去の出来事のお陰で、そのこと自体は割にあっさりと受け入れられた
その他の一つ面倒な現状についても、半ば保留状態だ
………顔を合わせる度に一言二言余計なコトを言うヤツはいるが、大抵のヤツは保留状態だ
「育成地のデータは見せられても管轄外だ」
エルンストが持ってきたアルカディアの育成状況を示すというデータ
守護聖のヤツや、研究院の奴等が見れば内容は解るのかもしれねぇが、データの基本的な情報を知らない人間に結論だけを見せたところで解る筈も無いだろう
「いえ、貴方が感じている状態をお知らせ下さい。研究院とのデータの比較を行います」
淡々と告げエルンストが資料を広げ始める
「では、この地点の状況ですが………」
「特に問題は感じ無いな」
「研究院のデータでもそうなっていますね」
細かく区切られた地域の情報が一方的に交わされる
「やはり問題点は、ここ、ということですか」
彼等が、この地へ呼び寄せられた時の出現場所
先日、集団で押し寄せた際の要請もその場所を問題視していた
その件に関しては“当たり”だ
あの場所に居る存在
そして“敵”の存在
「一度アンケートでも取ったらどうだ?」
2つの存在
存在の混同
誤った認識
「アンケート、ですか?」
「守護聖それぞれに意見を聞けば何か解るかもしれないぜ?」
話しさえすれば、単純に解ることもあるはずだ
だが、相変わらずこいつ等は肝心な所で意志の疎通が出来ていないな
………一概にその一言で片づけられないのがややこしいところだが
「なるほど、確かに個別に印象を聞いたことはありませんでしたね」
納得した様にエルンストが頷き
「それではアリオス、貴方はどう思っているんです?」
アリオスへ質問を投げかける
「守護聖に聞くんじゃなかったか?」
「折角ですから、手始めに貴方から聞こうかと」
前向きなことで………
「………どっちについて、だ?」
「エルダ、と名付けられた存在のことです」
………エルダ?
ほんの一瞬誰のコトかと思ったが、ここで出される存在はアレ以外には無い
エルダ、エルダねぇ………
そういう名前で呼ばれている事実が、未だ真実に辿り着いていないことを告げる
ったく、鈍いな
いの一番に気が付かなければならないヤツののんきな顔が思い浮かぶ
幾度目かのため息を一つ
「そうだな………」
どの程度まで言葉にするべきか迷いながらアリオスは言葉を告げた
 
 

END
 
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