解明されない真相


 
結局、事実を解明できていない
その事実に溜息がこぼれる
エルンストの問いかけに明確な答えを返すことなく研究院を後にした
『大事なことだ、自分で考えろ』
エルンストに告げた言葉は、今頃アンジェ達に伝えられているだろう
それにしても、本気で鈍いぜ
アンジェには馴染みのある気配、存在のはずだ
まだ一度も逢ったことのないアリオスの方が気がつく方が本当はおかしい
「その辺りにも何か秘密があるっていうのか?」

アリオスの近くを何かが通り過ぎた気配がした
なんだ?
目に見える範囲には何もいない
アリオスは辺りの様子を窺う
町中から離れたこの場所には人の姿はない
いやな感じはしなかったな
敵となる相手の気配ではない
ってことは………
実体ではない人物
アリオスは側にある木の幹へと背を預ける
陽光に暖められた木のぬくもりを感じる
再び気配を感じる
顔を向けた先から視線を感じる
「どうした?」
以前とは少し違う気配がする
目の前の空間に揺らぎが生じる
揺らいだ空間の中から現れる一つの人影
「――――――」
声が音として聞こえない
だが、現れた姿は以前とは違い姿形がはっきりとしている
ふと思いついてアリオスは、その姿へと近づく
視線がアリオスの右腕へと向けられる
誘われるように右腕を伸ばし、触れる
「実体があるんだな」
幽かに笑みが浮かぶ
触れた右手が両手に包まれる
聞こえない音で言葉が呟かれる
「………ああ」
祈りなのか願いなのか、呟かれた言葉は間違いなくアリオスへ向けられたもの
手が離される
一歩アリオスの側を離れた相手が一礼する
そのまま姿が消えていく
掴まれた右手に何かが残されている
………なんだ?
金属の輝きをまとった細長い物質
しばらく色々と試してみるが、そのまま何も変わらない
しばらくの間手の中で転がしてはみたが、見当もつかない
溜息が一つこぼれる
あいつは俺に用事があって現れた
これは俺に渡したもの、で間違いないだろう
間違っても、アンジェに渡せっていう訳ではない
「聞きに行かないとならないのか」
先ほど出てきたばかりの研究院へ向けて歩き出す
手の中の物質はアリオスの手の中で不思議なきらめきを放っていた
 
 
END
 
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