「攻撃的な力は一時的な抵抗としては有効だが、絶対的な対抗手段にはなり得ない」 “敵”である存在に対して、攻撃的な力は、通用しない事は解っている。 より強い力で一時的に押しのける事は出来ても、ダメージを与える事 ましてや滅ぼす事は出来ない 下手な力なら、無駄に終わるどころか相手が力をつける糧に変わるだけだ 「俺達に出来る事は無いって事か」 難しい顔をしてオスカーが呟く、が 「違うな、俺に出来る事が無いんだ」 “攻撃的な力”がイコールで攻撃に結びつくとは限らない 問題になるのは力の質の方だ そもそも“サクリア”なんてものはどれもこれも、宇宙の“育成”の為に必要なエネルギーだ そのときどきで違った使い方をする事もあるだろうが、その本質が“攻撃”である筈がない それとは違って“魔導”の力は、その大部分が“攻撃”の為の力だ むろんそれ以外の使い方をする者もあるが、本質は“攻撃”にあるのは間違いがない 「俺に出来る事は無いとあらかじめ言った筈だ」 アリオスの言葉に幾人かが顔を見合わせる 「本質の事は解ったが、アリオスには無理と決めつけられるものじゃないな」 しつこく繰り返された“サクリア”の存在 「その件は後だ、今は確実的な話をするべきだな」 ことある毎に蒸し返したいらしいが、ソレは今必要な話じゃない だいたい本人に区別が付かない状態で、力を使おうとするのは無謀以外の何物でも無い 一部、顔に納得していないと書いてある奴等が居るが、話の進行に支障をきたすつもりは無いらしくおとなしくしている 「ラ・ガに対抗するにはサクリアを使用すると言うことで良いのだろうが………」 ただ闇雲にサクリアを使えば良いって訳では無い ソレで事が済むなら、未来の奴等がどうにかしている筈だ 「その辺りについて、仮説が在ります」 分析結果だろう資料を片手にエルンストが発言する 分析結果と推測と予測 それらをふまえた上で導き出される結論 「可能性は高いと思うぜ」 未来の宇宙で対抗する事が出来なかった理由 この地で確実に力がそがれている理由 それがこの特殊な空間にあるとするならば、現状にもいくつか説明をつける事が出来る 「思い当たらぬでもないな」 どうやらそれぞれ思い当たる事があるようだ すんなりと、エルンストの仮説は受け入れられる 「それなら、俺達がやる事は結局一つしかないってことだよな」 不満げにゼフェルが言う まぁ、ソレはそうかもだろう 「だが、大事な仕事だ」 サクリアを贈り続けること ラ・ガの力を削るのになくてはならない作業だ 「それで今後の予定だが………」 対策を立て始めた奴等から目を離してアリオスは部屋の隅へと視線を向ける 部屋の片隅で、こそこそと話をするアンジェリークとレイチェルの姿が見える 話の間からずっと、ちらちらとこちらへレイチェルの視線が向けられていた ………ろくな話じゃないみてーだな なんとなく嫌な予感を覚えて、アリオスは再び、守護聖達の話の輪へと戻った END
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