根負け


 
一緒に行動する事になったヤツを適当に巻いて帰ればいい
強引に引き留められた場所で、内心こっそりと考えていたんだが
「思ったんだがな」
ヴィクトールのその言葉が始まりだった
「対抗策が無いというお前が、敵に一番近い所で一人で暮らしているというのは危険なんじゃないか?」
全員の視線が一斉に俺に向けられる
もっともな意見だ
他の奴等の事だったら躊躇うことなく口にして居た言葉
だが自分の身に降りかかる事を思えば、簡単に同意する訳にはいかねぇ
素朴な疑問、親切心
ヴィクトール自身には裏は無かっただろうが、今後の展開には良くないものしか思い浮かばねぇ
「倒す為の決定的手段が無いだけで、防御手段なら幾らでもある」
嘘は言ってはいねぇ
危ないとなったら、その場を離れるっていう選択肢だってある
「だが………」
「絶対大丈夫って事は言えないんでしょ?」
オリヴィエのヤツが明らかに何か企んでいるって顔をして近づいてきやがる
「そなた自身に対する危険も排除すべきであろうな」
まじめくさったジュリアスの言葉
こっちは、オリヴィエと違って裏が無いから余計に始末に困る
「今までの方が危険だったんだぜ?」
以前は霧との距離が近かったが、今ではだいぶ距離が空いている
ラ・ガの居る場所から直接手出しが出来る様な距離じゃない
「今更危険な状況なんてならねぇよ」
俺に手出しをする余裕があるなら、他の奴等の方を餌食にした方が早いぜ
「だが、お前を取り込む事が一番効果的だからな」
一見面白がっている様だが、混ざった本気が透けて見える
また乗っ取られでもしたらやっかいな事になる、か
前例があるだけに強く言えないのが辛いところだぜ
それと………
アリオスは大きなため息を吐く
少なくとも3人
アリオスがどこに住んでいるのか知っているヤツがいる
振り切って帰ったところで、押しかけられるのがオチだ
「そうですね、色々な事を考えると、ここは皆と一緒に居て貰う方が良いと思いますよ」
賛同するこいつらの言葉に悪意は無い
だが、嫌な予感をひしひしと感じるぜ
そもそもお前等も一人一人いろんな場所に点在して住んでいるんじゃなかったか?
「お前等………………」
その辺りをふまえて指摘しようと口を開いたその時、背後から爆弾が振ってきた

脅迫と泣き落とし
アリオスは広く快適なベッドの上に寝ころんでため息を吐く
あの後突然現れた女性4人に良いようにかき回された
結果………
「アリオス、荷物はどうするの?」
アリオスの顔をアンジェリークが覗き込む
「………ああ、そうだな」
元々荷物といえるモノは持っては居ない
ふぅ
アリオスはもう一度ため息をつき起きあがる
ここは宮殿の一室
必死のお願いと、泣き落としに負けた結果だ
「猫だけはつれてこねぇとな」

そして、居心地の良いベッドの上で満足そうに猫が鳴いた
 

END
 
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