作戦開始


 
ラ・ガの正体
一部の守護聖達には心当たりがある様だが、俺には見当が付かない
ただ彼奴等の言動から、歓迎出来ない存在だということを理解するだけだ
………滅ぼしてしまいたいといった積極的な感情が伺えないのが気になるが、その辺りも俺が知ることのない何らかの理由があるんだろう
ラ・ガが存在する事を容認している訳では無い
現状をどうにかしようという気持ちを見て取ることは出来る
これから行う事
ラ・ガと相対する事
その結果もたらされるものは
どれほど上手く行ったとしても“滅び”には結びつかない
それは直感でしか無いが
アンジェ達を始めとして女王達にも異論は無い様だ
あっちの女王達は、守護聖と同じ様に、ラ・ガという存在になんらかの心当たりがあるみたいだからな

「サクリアが満ちます」
小さな世界を埋め尽くそうとするサクリアの輝き
ただ一つだけサクリアに染まらない―――染めなかった場所
「頃合いだな」
「ええ、やるならば“今”を置いて他には無いかと」
真夜中の研究院
計算通りサクリアが満ちた
計画通り銀の大樹だけが残される
エルンストの言葉に頷き、アリオスは待機していた人物へと視線を向ける
「実行に移す」
戦い―――とは呼べないかもしれないが―――の幕開け
アリオスの言葉に短い返事を返すと、各人へ連絡をする為に足早に退出していく
「これから夜通し準備をするとして、作戦を開始するのは夜が明けてからでしょうか?」
既に下準備は始めていたとはいえ、実際に準備を整えるのには確かに時間が掛かる
無理に急がせでもしない限りはどうしても明け方になるのは確かだが
「夜中よりは有利なんじゃないか?」
ああいう奴等は“夜”の方が力が強いって言うだろう
「………一利ありそうですね」
………………
納得したようなエルンストの様子に、改めて冗談だというのも気が引ける
………まぁ、彼奴等も夜中にたたき起こされるよりは、朝方の方がましだろう
微かにため息を一つ
サクリアの仕組みはいまいち解らないが、そう立て続けにサクリアを使えるという訳では無いだろう
そうなれば少なくとも、先刻サクリアを贈った奴等は休ませる必要がある
「ここは任せる」
一言言葉をかけると準備の為に研究院を後にした

そっと、残された場所へ向けてサクリアを流し込む
この場に居るはずの存在達へと刺激を与える
銀の大樹を中心にして張り巡らせた障壁を徐々に狭め、閉じていく
息を詰め、足音を消した彼等がアリオスの脇を通り過ぎる
それぞれが浮かべる緊張の面持ち
華奢な手が通り過ぎる際にそっと触れる
強い決意を込めた視線
「ダイジョウブ、ワタシが付いてル」
続いた彼女が通り過ぎる際に小さく呟く
「ああ、頼んだぜ」
足が止まる
そろそろ時間だぜ
中に眠る人物へ向けた言葉、閉ざされる障壁
「それじゃ、はじめるぜ」 
アリオスの声と共に、微かに空気が振動した
 

END
 
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