感覚


 
不安げな表情で辺りを見渡す
確かめるように空へと向けられる視線
そこに何が存在しているのか知っている人はいない
そこに存在している物を見ることの出来る人はいない
それでも、自分達を守る力を確認し、変わらずそこに在る事に安心するように、人々は空を確認する
………繰り返される
その行動が幾度となく繰り返されている
この地に住む民には、今この場所がどのような状態にあるのか詳しい事は語られてはいない
だが、感じるのだろう
濃く濃密になる不穏な気配
サクリアが満ちることによって生まれた安心感さえも薄らぐ様な不気味な空気
細かく肌を刺激するような、小さいながら無視することのできない感覚
無意識に左手が首筋をなでる
もう始まっているのだろうか
どこか不安げな人々の姿から目を離し、遠く銀の大樹へと視線を向ける
明確に感じ取ることのできない力
目に見えることのない障壁
だが………
「始まったのか?」
凛とした鋭い気配が身体の中を駆け抜けていった

「心配?」
問いかけた声の主の方がよほど心配そうで不安そうな顔をしている
心配、か………
「どうだろうな」
心配かと問われれば確かに心配する気持ちもある
だが、今の感情の大部分は“もどかしさ”だ
何もせず、何もできず
ただ見ているだけだと言うのは性に合わない
もしかしたら戦いになるかもしれないというこの場面で蚊帳の外でっていうのは落ち着かない
そもそも、やられっぱなしって事自体が気に入らない
………おとなしくしているしかないって事は良く分かっているけどな
「中に行けば良かったんじゃないか?」
側にいる落ちつかなそうな相手へと思い出したように声をかける
アンジェの補佐官だっていうこいつは、当然アイツと一緒に行動するものだと思っていた
俺以外の他の奴等もそのつもりだったはずだ
「ん、だけどコッチのフォローも必要だからネ」
障壁の中のサクリアの量が少しずつ増えているようだが、まだ目に見える変化は無い
言葉の合間に向けられた鋭い視線
「………なるほどな」
考えたくは無い可能性
中に居る守護聖の奴等は全く考えてもいないだろう結末
―――もしも上手く行かなかったら
「必要ないだろうな」
「ワタシもそう思うんだけどネ」
信頼していない訳ではない
誰よりも、信頼はしているだろう
「…………………」
言葉を続けようとしたその瞬間、障壁に強い力が加わった
 

END
 
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