決着


 
「帰ろう」
そう言って当然の様に差し出された手
困惑と躊躇いで、差し出された手をただ見つめた

一瞬
あの瞬間、感覚が繋がった
遠く空の果てに居るアンジェリークと感覚が繋がっていた
ラ・ガと呼ばれる存在の正体
その核となっていた部分
嘆きと憎しみと
絶望に覆われた感情
自分にはどうにもならない所で起きた出来事
逆らうことも出来ず
ただ流されるだけの運命
どれほど訴えたとしても、その声は無視され
望まない未来を強いられ
思うような結果が出せなかったからと
あっさりと投げ捨てられた幼い意志
押し殺された数々の感情
奪われた未来
蓄積された想い、感情
暗い感情の固まりにアンジェリークが触れる
息を飲む誰かの気配を感じる
―――大丈夫だ
望まない未来
押しつけられた立場
奪われた感情
かつて同じ立場に立たされた
かつて同じ思いを抱いた
だからこそ取り込まれる
だから“心”を元にした“力”は通じない
だが………
生まれたばかりの世界には
未来を摘み取られた者も
未来を摘み取る者も存在しない
アンジェリークが抱きしめる
嘆きも呪いも何もかもを受け止める
そこに居るのは運命を受け入れ
だが、未来を決められる事を良しとしなかった者
納得出来ないと声を上げ
自分の未来を引き寄せた者
お前達が―――俺が―――出来なかった事をした者だ
一つに固められていた意志や感情がバラバラに解ける
解けて消えて無くなって
残されたのは一つの魂
覚えの在るソレが獣の手に渡る
強い翼の羽ばたき
空間が歪む
まっすぐに向けられる視線
『―――――――――』
脳裏に響く言葉
開いた空間の中へと身を躍らせた

「ただいま」
アンジェリークの元へレイチェルが駆け寄る
「お帰り」
交わす声が微かに震えている
誰かが一言言葉を漏らし
とたんに辺りが騒がしくなる
相変わらずの様子に肩を竦め
一歩足を踏み出した

「どうやら上手くいったみたいだね」
見上げた空はいつもと同じ
嫌な気配も今はもう感じられない
「やれやれ、ようやく終わったな」
「迎えに行きましょか」
銀の大樹へと向けて、誰からともなく足を踏み出す
向かった先で何が起きているか知らずに、彼等は言葉を交わしながら軽い足取りで歩みを進めた
 
 

END
 
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