荷 物


 
「アナタの荷物ってサ、それだけ?」
手ぶらでこの地に現れたとはいえ、ココで生活していた以上必然的に荷物は出てくる
ワタシ達はもちろん、守護聖を初めとしたミナサマ方もココに居る間に出来た荷物を必死で纏めてるトコロ
ダッテいうのに、目の前に居るオトコは、何もしていない
自分の荷物位自分で纏めなさいッテ意味を込めて声を掛けたんだけど
「これ以上何がある?」
「何ッテ………」
真顔の返事に言葉を失う
カレが手にしているのは、一振りの剣ダケ
ココで生活していた荷物は何一つ手にしてない
「ホントにそれだけ?」
信じられなくて重ねて聞いた言葉に、カレが眉を寄せる
「他に何があるって………」
カレの言葉を遮るように、足下から大きな鳴き声がする
カレの足に絡みつくように身をすり寄せる白いネコ
カレの言葉に抗議するかの様に、必死で声を上げてる
コノコは確か、カレの飼い猫
この地で知り合って、カレと一緒に居るコトに決めたんダッケ?
アンジェが楽しそうに語った言葉が思い出される
そして、カレが語った荷物はカレ自身と身につけたモノだけ
カレが手にしているのは剣だけ
じっと見つめていたら、ひときわ高い声を上げたソノコと目があった
「………ソノコは?」
何か意味があった訳じゃない
何も考えてはいなかった
ただ、言葉が滑り落ちた
「生き物を持ち込むのは拙いんじゃないか」
この地からワタシ達の宇宙へ
確かに、他の宇宙の生命を連れて行くのは何かの影響が出るかも知れない
ケド、サ
状況を解っているのか、ネコが鳴き声を上げる
「ザンネンだけど、コノコの場合“他の宇宙”に該当しないヨ」
ココアルカディアは、ワタシ達の宇宙の未来の大地
ココに存在する者は、ワタシ達の宇宙に生まれる者達
カレにまとわりついていたネコがしっかりとワタシを見上げる
「ダカラ、連れて行って問題ないハズなんだヨネ」
ワタシの言葉にカレが複雑な表情を浮かべる
「一度手を差し伸べたのなら、最後まで責任を持たないとネ」
ウインク付きのワタシの言葉に、ネコが甘えた声を上げた

そして、帰還当日
カレの手には一振りの剣と一匹のネコ
カレの腕の中で、アノコは誇らしげな顔をしてた
 
 
 

END
 
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