生 命


 
手を触れる
つい先日までそうしていた様に、同じ様に手を触れる
力を注ぐ
先日までと同じ様に、その幹へと力を注ぎ込む
幾度か繰り返した行動
だが、今日は送る相手が違う
木が微かに鳴動する
生まれたばかりの意志を伝えてくる
老成した植物の気配
それと重なり存在する、生まれたての気配
「やっぱり、お前だったか」
ポッと、小さく光が生まれる
まだ言葉にはならない、感情が伝わってくる
無意識に動いた手が光に触れる
「………………」
繰り返し映し出される姿
強く焼き付いているんだろう光景
そして、この存在が生まれる事になった想い
「だが、お前はお前だ」
アリオスの言葉に、光が戸惑ったように小さく揺れた

宇宙の狭間であるこの空間が、小宇宙へと変化した
そう聞かされた時からある予感があった
宇宙の誕生
そのきっかけは様々で
仕組みは未だ解明されてはいない
だが………
先日無事この地を去った存在は、“宇宙の意志”
あの存在が生まれたからこそ、宇宙が誕生したのか
宇宙が誕生したからこそあの存在が誕生したのか
詳しいことは解らないが、“宇宙”を具現化したモノ
その存在は長い間ここに封印されていた
封印されると同時に、この場所で守られていた
守り続けていたのは、銀の大樹と呼ばれた樹木
この中で守られ、力を蓄えた
長い間流れ込んだんだろう聖獣の想い
そして、この木を媒介にして与えられた力
何も影響が出ないはずが無い
誰かが上げた喜びの声を聞きながら、この地の気配を探った
良く知った気配
力を持つ気配
その中にある新たな気配
半信半疑の予感は程なく確信に変わった

力を使い果たし、消えゆこうとする生命と替わる様に、新たに生まれたモノ
それと同時に安定した空間
新たに生まれた小宇宙
それが意味することはただ一つ
 
 
 

END
 
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